多項式
単項式
いくつの数や文字をかけ合わせたものを
\ommindex{単項式}{たんこうしき}といい,
単項式から数だけを取り出したものを,
その単項式の
\ommindex{係数}{けいすう}という。
1つの単項式について,
かけ合わされている文字の個数を,
その単項式の\ommindex{次数}{じすう}という。
2つ以上の文字を含む場合には,
特定の文字に着目して,
それ以外の文字を数とみなすことがある。
多項式
単項式の和として表される式を
\ommindex{多項式}{たこうしき}または\ommindex{整式}{せいしき}といい,
多項式に含まれる1つ1つの単項式を\ommindex{項}{こう}という。
単項式は,
項を1つだけ含む多項式である。
項のうち, 文字を含まないものを\ommindex{定数項}{ていすうこう}という。
定数項の次数は $0$ である。
多項式に含まれる単項式の次数のうち,
もっとも大きいものをその多項式の次数という。
式の計算法則
%
多項式 $A$, $B$, $C$ について,
次の計算法則が成り立つ。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
【交換法則】 $A+B=B+A, \quad AB=BA$
\item[(2)]
【結合法則】 $(A+B)+C=A+(B+C), \quad (AB)C=A(BC)$
\item[(3)]
【分配法則】 $A(B+C)=AB+AC$
\end{enumerate}
%
%
1つの文字についての多項式
1つの文字 $x$ だけを含む多項式を $x$ についての多項式といい,
$A(x)$ などと表す。
$x$ についての $n$ 次多項式は
%
\[
A(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0
\]
%
と表される。
ここで,
$a_k$ $(k=0,1,2,\ldots n)$ は $x^k$ の係数である。
多項式 $A(x)$ と数 $p$ に対して,
$A(p)$ は,
多項式 $A(x)$ の $x$ に $p$ を代入して得られる値を意味する。
式の展開
1つの文字についての多項式を,
次数の高い順に並べることを
\ommindex{降べきの順}{こうべきのじゅん}に整理するといい,
次数の低い順に並べることを
\ommindex{昇べきの順}{しょうべきのじゅん}に整理するという。
分配法則にしたがって,
多項式の積を単項式の和として,
降べきの順または昇べきの順に整理することを,
\ommindex{式の展開}{しきのてんかい}という。
次の\ommindex{展開公式}{てんかいこうしき}が成り立つ。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$
\item[ ]
$(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$
\item[ ]
$(a+b)^4=a^3+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4$
\item[(2)]
$(a-b)(a+b)=a^2-b^2$
\item[ ]
$(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$
\item[ ]
$(a-b)(a^3+a^2b+ab^2+b^3)=a^4-b^4$
\item[(3)]
$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$
\end{enumerate}
%
因数分解
因数
$A$, $B$ を1次以上の多項式とする。
多項式 $Q$, $R$ が
%
\begin{align*}
A=BQ+R \quad (\mbox{$R$ の次数} r < \mbox{$Q$ の次数})
\end{align*}
%
を満たすとき,
$Q$ を $A$ を $B$ で割ったときの\ommindex{商}{しょう},
$R$ を $A$ を $B$ で割ったときの\ommindex{余り}{あまり}
または\ommindex{剰余}{じょうよ}という。
$A$ を $B$ で割ったときの余りが $0$ であるとき,
$A$ は $B$ で\ommindex{割りきれる}{わりきれる}という。
$A$ が $B$ で割りきれるとき,
すなわち,
$A=BQ$ という関係が成り立つとき,
$B$ および $Q$ を $A$ の\ommindex{因数}{いんすう}という。
2つの多項式 $A$, $B$ が,
1次以上の多項式 $C$ を用いて,
$A=A'C$,
$B=B'C$ と書けるとき,
$C$ を $A$, $B$ の\ommindex{共通因数}{きょうつういんすう}という。
共通因数をもたない多項式は
\ommindex{互いに素}{たがいにそ}であるという。
因数分解
多項式 $P$ を,
多項式 $A$, $B$ を用いて $P=AB$ と積の形で表すことを,
$P$ を\ommindex{因数分解}{いんすうぶんかい}するという。
このとき,
$A$, $B$ は $P$ の因数である。
%
次のような因数分解の公式が成り立つ。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
$a^2\pm 2ab+b^2=(a\pm b)^2$
\item[(2)]
$a^3\pm 3a^2b+3ab^2\pm b^3=(a\pm b)^3$
\item[(3)]
$a^2-b^2=(a-b)(a+b)$
\item[(4)]
$a^3\pm b^3=(a\pm b)(a^2\mp ab+b^2)$
\end{enumerate}
%
因数定理
剰余の定理
$A(x)$ を1次以上の多項式,
$\alpha$ を定数とする。
このとき,
$A(x)$ を $(x-\alpha)$ で割ったときの余りを $R$ とすれば
%
\[
R=A(\alpha)
\]
%
が成り立つ。
これを\ommindex{剰余の定理}{じょうよのじょていり}という。
%
因数定理
$A(x)$ を1次以上の多項式,
$\alpha$ を定数とする。
このとき,
$A(x)$ が $(x-\alpha)$ で割りきれるための必要十分条件は
%
\[
A(\alpha)=0
\]
%
となることである。
これを\ommindex{因数定理}{いんすうていり}という。
集合
集合
%
ものの集まりを\ommindex{集合}{しゅうごう}といい,
集合に含まれる一つ一つのものをその集合の
\ommindex{要素}{ようそ}という。
$a$ が集合 $A$ の要素であるとき, $a$ は $A$ に
\ommindex{属する}{ぞくする}といい,
$a\in A$ または $A\ni a$ と表す。
また $a$ が $A$ の要素でないことを $a\notin A$ または $A\notin a$ と表す。
ある集合を考えるときの,
考察の対象となるもの全体を
\ommindex{全体集合}{ぜんたいしゅうごう}という。
%
部分集合
%
$A$ のすべての要素が $B$ の要素であるとき,
$A$ は $B$ の
\ommindex{部分集合}{ぶぶんしゅうごう}である,
または,
$A$ は $B$ に
\ommindex{含まれる}{ふくまれる}といい,
$A\subset B$ または $B\supset A$ と表す。
$A\subset B$ かつ $B\subset A$ のとき,
$A$ と $B$ は等しいといい,
$A=B$ と表す。
とくに,
$A$ 自身も $A$ の部分集合である。
%
共通部分と和集合
%
2つの集合 $A$, $B$ に対して,
$A$ と $B$ の両方に含まれる要素全体の集合を
$A$ と $B$ の\ommindex{共通部分}{きょうつうぶぶん}といい,
$A\cap B$ と表す。
また,
$A$ と $B$ のどちらかに含まれる要素全体の集合を
$A$ と $B$ の\ommindex{和集合}{わしゅうごう}といい,
$A\cup B$ と表す。
%
補集合と空集合
%
全体集合を $U$ とするとき,
集合 $A$ に対して,
$A$ に属さない要素全体の集合を $A$ の
\ommindex{補集合}{ほしゅうごう}といい,
$\overline{A}$ で表す。
すなわち,
%
\[
\overline{A}=\{x\in U\,|\, x\notin A\}
\]
%
である。
また,
要素をもたない集合を
\ommindex{空集合}{くうしゅうごう}といい,
記号 $\phi$ で表す。
全体集合, 補集合, 空集合について次の関係が成り立つ。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
$A\cap \overline{A}=\phi$
\item[(2)]
$A\cup \overline{A}=U$
\item[(3)]
$\overline{U}=\phi$
\item[(4)]
$\overline{\phi}=U$
\item[(5)]
$\overline{\overline{A}}=A$
\end{enumerate}
%
%
ド・モルガンの法則
%
$A\cap B$ は $A$ と $B$ の両方に含まれる要素の集合であるから,
その補集合は $A$ か $B$ のどちらかに含まれない。
すなわち
%
\begin{align*}
\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}
\end{align*}
%
が成り立つ。
また,
$A\cup B$ の要素は $A$ か $B$ のどちらかに含まれるから,
その補集合は $\overline{A\cup B}$ の要素は $A$ にも $B$ にも含まれない。
すなわち
%
\begin{align*}
\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}
\end{align*}
%
が成り立つ。
これらの法則を\ommindex{ド・モルガンの法則}{どもるがんのほうそく}という。
%
数の集合
%
数の集合は,
次の記号で表されることが多い。
%
\begin{enumerate}
\item
$\textbf{N}$ : 自然数全体の集合
\item
$\textbf{Z}$ : 有理数全体の集合
\item
$\textbf{R}$ : 実数全体の集合
\item
$\textbf{C}$ : 複素数全体の集合
\end{enumerate}
%
%
区間
区間
%
数直線上の連続した範囲を
\ommindex{区間}{くかん}という。
区間はその端点を含むかどうかによって,
次のようなものがある。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
\ommindex{閉区間}{へいくかん}
$[\,a,b\,]=\{x\in\textbf{R}\,|\, a\le x \le b\}$
\item[$\bullet$]
\ommindex{開区間}{かいくかん}
$(a,b)=\{x\in\textbf{R}\,|\, a\le x \le b\}$
\item[$\bullet$]
\ommindex{半開区間}{はんかいくかん}
$[\,a,b)=\{x\in\textbf{R}\,|\, a\le x < b\}$, $(a,b\,]=\{x\in\textbf{R}\,|\, a< x \le b\}$
\end{enumerate}
%
%
無限区間
%
$\infty$ を含む区間を\ommindex{無限区間}{むげんくかん}という。
$(-\infty,\infty)$ は\ommindex{全区間}{ぜんくかん}ということもある。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$[\,a,\infty)=\{x\in\textbf{R}\,|\, a\le x\}$
\item[$\bullet$]
$(a,\infty)=\{x\in\textbf{R}\,|\, a< x\}$
\item[$\bullet$]
$(-\infty,b\,]=\{x\in\textbf{R}\,|\, x\le b\}$
\item[$\bullet$]
$(-\infty,b)=\{x\in\textbf{R}\,|\, x< b\}$
\item[$\bullet$]
$(-\infty,\infty)=\textbf{R}$
\end{enumerate}
%
%
命題
命題
%
それが正しいか正しくないかの判断の対象となる
文または式を\ommindex{命題}{めいだい}という。
命題が正しいことを\ommindex{真}{しん}である,
正しくないことを\ommindex{偽}{ぎ}であるという。
文字を含む文や式で,
文字の値によって真偽が定まるものを\ommindex{条件}{じょうけん}という。
条件 $p$ に対して,
$p$ でないという条件を $p$ の\ommindex{否定}{ひてい}といい,
$\overline{p}$ などで表す。
%
真理集合
%
条件 $p$ を満たすもの全体の集合を,
条件 $p$ の\ommindex{真理集合}{しんりしゅうごう}という。
条件 $p$,
$q$ の真理集合をそれぞれ $P$,
$Q$ とする。
命題「$p$ ならば $q$」は,
$P\subset Q$ であるときに限って真であると定める。
したがって,
$p$ であるが $q$ でない例があれば,
この命題は偽である。
このような例を\ommindex{反例}{はんれい}という。
$p$ をこの命題の\ommindex{仮定}{かてい},
$q$ をこの命題の\ommindex{結論}{けつろん}という。
%
必要条件と十分条件
%
命題「$p$ ならば $q$ である」が真であるとき,
$p \Longrightarrow q$ と表す。
$p \Longrightarrow q$ であるとき,
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
条件 $q$ を,
$p$ であるための\ommindex{必要条件}{ひつようじょうけん}
\item[$\bullet$]
条件 $p$ を,
$q$ であるための\ommindex{十分条件}{じゅうぶんじょうけん}
\end{enumerate}
%
という。
$p \Longrightarrow q$ かつ $q \Longrightarrow p$ であるとき,
記号
%
\[
p \Longleftrightarrow q
\]
%
で表し,
$q$ は $p$ であるための
\ommindex{必要十分条件}{ひつようじゅうぶんじょうけん}であるという。
このとき,
$p$ は $q$ であるための必要十分条件でもある。
$p$ と $q$ は\ommindex{同値}{どうち}であるという。
%
2次式
2次式
%
$a$, $b$, $c$ が定数であるとき,
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c \quad (a\ne 0)
\end{align*}
%
を $x$ についての\ommindex{2次式}{にじしき}という。
2次式は
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c
=
a\left\{\left(x+\frac{b}{\,2a\,}\right)^2
-
\frac{b^2-4ac}{\,4a^2\,}\right\}
\end{align*}
%
と変形することができる。
右辺の形の式を2次式の\ommindex{完全平方形}{かんぜんへいほうけい}という。
複素数も許容すれば,
この式はさらに
%
\begin{align*}
&
ax^2+bx+c
\\
&=
a\left\{
\left(x+\frac{b}{\,2a\,}\right)^2
-
\sqrt{\frac{b^2-4ac}{\,4a^2\,}}^2
\right\}
\\
&=
a
\left(
x-\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{\,2a\,}
\right)
\left(
x-\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{\,2a\,}
\right)
\end{align*}
%
と因数分解することができる。
%
2次式の符号
%
$x$ についての2次式 $ax^2+bx+c$ ($a\ne 0$) について,
式
%
\begin{align*}
D=b^2-4ac
\end{align*}
%
を\ommindex{判別式}{はんべつしき}という。
判別式を用いれば,
2次式の完全平方形は
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c
=
a\left\{\left(x+\frac{b}{\,2a\,}\right)^2
-
\frac{D}{\,4a^2\,}\right\}
\end{align*}
%
と表すことができる。
したがってその符号について,
次のことが成り立つ。,
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
$a>0$,
$b^2-4ac<0$ のとき,
任意の実数 $x$ に対して
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c>0
\end{align*}
%
である。
このとき,
2次式は\ommindex{正定値}{せいていち}であるという。
\item[(2)]
$a>0$,
$b^2-4ac=0$ のとき,
任意の実数 $x$ に対して
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c\ge 0
\end{align*}
%
である。
等号は $x=-\frac{b}{2a}$ のときに限って成り立つ。
このとき,
2次式は\ommindex{準正定値}{じゅんせいていち}であるという。
\item[(3)]
$a<0$,
$b^2-4ac<0$ のとき,
任意の実数 $x$ に対して
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c<0
\end{align*}
%
である。
このとき,
2次式は\ommindex{負定値}{ふていち}であるという。
\item[(4)]
$a<0$,
$b^2-4ac=0$ のとき,
任意の実数 $x$ に対して
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c\le 0
\end{align*}
%
である。
等号は $x=-\frac{b}{2a}$ のときに限って成り立つ。
このとき,
2次式は\ommindex{準負定値}{じゅんふていち}であるという。
\end{enumerate}
%
%
2次方程式
2次方程式の解の公式
%
$a$, $b$, $c$ を実数とするとき,
$x$ に関する方程式
%
\begin{align*}
ax^2+bx+c=0
\quad
(a\ne 0)
\end{align*}
%
を\ommindex{2次方程式}{にじほうていしき}という。
この方程式の左辺は
%
\begin{align*}
&
ax^2+bx+c
\\
&=
a\left(x^2+\frac{b}{a}+\frac{c}{a}\right)
\\
&=
a\left\{x^2+2\cdot \frac{b}{2a}+\left(\frac{b}{2a}\right)^2
-\left(\frac{b}{2a}\right)^2+\frac{c}{a}\right\}
\\
&=
a\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2
-\frac{b^2-4ac}{4a^2}\right\}
\\
&=
a\left\{
\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2
-
\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}^2\right\}
\\
&=
a
\left(x+\frac{b}{2a}+\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}\right)
\left(x+\frac{b}{2a}-\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}\right)
\end{align*}
%
と変形できる。
ここで,
複号を $a$ の符号と同じものとすれば
%
\begin{align*}
\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}
=
\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\quad
\end{align*}
%
となるから,
与えられた2次方程式の解は
%
\begin{align*}
x
=
\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}
%
となる。
これを2次方程式の\ommindex{解の公式}{かいのこうしき}という。
%
判別式
%
2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ $(a\ne 0)$ に対して,
%
\begin{align*}
D=b^2-4ac
\end{align*}
%
とおく。
このとき,
この2次方程式の解は,
$D$ の符号によって次のように分類することができる。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$D=b^2-4ac>0$ ならば2つの異なる\ommindex{実数解}{じっすうかい}をもつ。
\item[$\bullet$]
$D=b^2-4ac=0$ ならば
ただ1つの解 $x=\displaystyle -\frac{b}{2a}$ をもつ。
これを\ommindex{2重解}{にじゅうかい}という。
\item[$\bullet$]
$D=b^2-4ac=0$ ならば2つの異なる\ommindex{虚数解}{きょすうかい}をもつ。
\end{enumerate}
%
式 $D=b^2-4ac$ を2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の
解の\ommindex{判別式}{はんべつしき}という。
%
解と係数の関係
%
2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解を $\alpha$,
$\beta$ とすると,
これらの和,
積について
%
\begin{align*}
\alpha+\beta
&=
\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
+
\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\\
&=
-\frac{b}{a}
\\
\alpha\beta
&=
\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\cdot
\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\\
&=
\frac{b^2-(b^2-4ac)}{4a^2}
\\
&=
\frac{c}{a}
\end{align*}
%
が成り立つ。
これら2つの式
%
\begin{align*}
\alpha+\beta=-\frac{b}{a},
\quad
\alpha\beta=\frac{c}{a}
\end{align*}
%
をまとめて,
2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の
\ommindex{解と係数の関係}{かいとけいすうのかんけい}という。
%
分数式
分数式
%
$A$, $B$ を多項式 ($B\ne 0$) とするとき,
$\frac{A}{B}$ を\ommindex{分数式}{ぶんすうしき}という。
分母と分子に共通因数がない分数式を
\ommindex{既約分数式}{きやくぶんすうしき}という。
分数式の計算は次のように行う。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{A}{B}\times\frac{C}{D}
=\frac{AC}{BD}$
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{A}{B}÷\frac{C}{D}
=\frac{A}{B}\times\frac{D}{C}
=\frac{AD}{BC}$
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{A}{C}\pm \frac{B}{C}
=
\frac{A\pm B}{C}$ (複号同順)
\end{enumerate}
%
%
%
繁分数
%
分子や分母に分数式が含まれる分数式を
\ommindex{繁分数式}{はんぶんすうしき}という。
繁分数式は,
次のようにして簡単な分数式に変形できる。
%
\[
\frac{\displaystyle \frac{A}{B}}{\displaystyle \frac{C}{D}}
=
\frac{\displaystyle \frac{A}{B}\times BD}{\displaystyle \frac{C}{D}\times BD}
=
\frac{AD}{BC}
\]
%
%
分母の有理化・分子の有理化
%
分母に無理式を含んだ分数式を,
次のようにして,
有理式を分母とする分数式にすることを
\ommindex{分母の有理化}{ぶんぼのゆうりか}という。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
$a$ が正の数のとき,
%
\begin{align*}
\frac{1}{\,\sqrt{a}\,}
=
\frac{\sqrt{a}}%
{\,\left(\sqrt{a}\right)^2\,}
=
\frac{\sqrt{a}}{\,a\,}
\end{align*}
%
\item[(2)]
$a$ と $b$ が異なる正の数のとき,
%
\begin{align*}
\frac{1}{\,\sqrt{a}+\sqrt{b}\,}
=
\frac{\sqrt{a}-\sqrt{b}}%
{\,(\sqrt{a}+\sqrt{b}\,)(\sqrt{a}-\sqrt{b}\,)\,}
=
\frac{\sqrt{a}-\sqrt{b}}{\,a-b\,}
\end{align*}
%
\end{enumerate}
%
また,
分子に無理式を含んだ分数式を,
次のようにして,
有理式を分子とする分数式にすることを
\ommindex{分子の有理化}{ぶんしのゆうりか}という。
%
\begin{align*}
\,\sqrt{a}-\sqrt{b}
=
\frac{\,(\sqrt{a}-\sqrt{b}\,)(\sqrt{a}+\sqrt{b}\,)\,}%
{\sqrt{a}+\sqrt{b}}
=
\frac{\,a-b\,}{\sqrt{a}+\sqrt{b}}
\end{align*}
%
%
部分分数分解
%
分母が因数分解された分数式は,
分母の因数を分母とする分数式の和に変形することができる。
これを\ommindex{部分分数分解}{ぶぶんぶんすうぶんかい}という。
部分分数分解は次のように行う。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{F(x)}{(x+a)(x+b)}=\frac{A}{x+a}+\frac{B}{x+b}$
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{F(x)}{(x+a)(x^2+bx+c)}
=
\frac{A}{x+a}+\frac{Bx+C}{x^2+bx+c}$
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{F(x)}{(x+a)^2}
=
\frac{A}{x+a}+\frac{B}{(x+a)^2}$
\item[$\bullet$]
$\displaystyle \frac{F(x)}{(x^2+bx+c)^2}
=
\frac{Ax+B}{x^2+bx+c}+\frac{Cx+D}{(x^2+bx+c)^2}$
\end{enumerate}
%
ここで,
$F(x)$ は次数が分母の次数より低い多項式,
$a$, $b$, $c$, $A$, $B$, $C$, $D$ は定数であり,
(1), (2) において分母の因数は互いに素であるとする。
応用例
- 一自由度系の振動(1) (機械力学(V-A-3 力学))
- 伝導伝熱(3) 定常熱伝導の温度分布 (伝熱工学(V-A-4 熱流体))
- 積分速度式の導出(2次反応) (物理化学)
- ラプラス変換演習 (電気回路)
- 1次遅れ系の周波数応答の振幅 (計測制御工学)
- 理想溶液の回分単蒸留 (化学工学)
実数
実数の分類
%
\ommindex{実数}{じっすう}はすべて
\ommindex{有限小数}{ゆうげんしょうすう}
または
\ommindex{無限小数}{むげんしょうすう}で表すことができる。
このうち,
小数点以下が $0$ である小数が
\ommindex{整数}{せいすう}である。
正の整数を
\ommindex{自然数}{しぜんすう}という。
\ommindex{有理数}{ゆうりすう}は分数で表される実数であり,
有限小数または循環小数で表すことができる。
逆に,
有限小数, 循環小数は分数で表すことができる。
\ommindex{無理数}{むりすう}は循環しない無限小数であり,
たとえば,
$0.10110111011110\cdots$ は無理数である。
% %
% \begin{center}
% \input{./ommF/実数の分類.wtp}
% \end{center}
% %
%
%=image:/media/2014/07/30/140672192394225200.png:
絶対値 (実数の―)
%
実数 $a$ に対して,
正の実数 $\left|a\right|$ を次のように定める。
$\left|a\right|$ を $a$ の\ommindex{絶対値}{ぜったいち}という。
\[
\left|a\right|
=
\left\{\begin{array}{rcc} a && (a>0) \\ -a && (a<0) \end{array}\right.
\]
%
数直線
%
直線 $\ell$ 上に異なる2点 O,
E を定め,
$\ell$ 上の点 A に対して,
次の規則によって実数 $a$ を対応させるとき,
直線 $\ell$ を
\ommindex{数直線}{すうちょくせん}といい,
点 O をその
\ommindex{原点}{げんてん}という。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
点 O には $0$,
点 E には $1$ を対応させる。
\item[$\bullet$]
$\text{OA}=a$ である点 A に対して,
A が O に関して E と同じ側にあるとき $a$,
A が O に関して E と逆の側にあるとき $-a$ を対応させる。
\end{enumerate}
%
累乗根
平方根 (実数の―)
%
$a\ge 0$ に対して $x^2=a$ となる
負でない実数 $x$ を $a$ の\ommindex{平方根}{へいほうこん}といい,
平方根を $\sqrt{a}$ と表す。
したがって,
$a\ge 0$ のとき $\sqrt{a}\ge 0$ である。
負の数の平方根は,
実数の範囲では存在しない。
$\sqrt{a}$ を\ommindex{ルート}{るーと}$a$ といい,
$\sqrt{\ }$ を\ommindex{根号}{こんごう}という。
%
平方根 (複素数の―)
%
複素数 $a$ に対して $x^2=a$ となる複素数 $x$ を $a$ の
\ommindex{平方根}{へいほうこん}といい,
$\sqrt{a}$ と表す。
$a\ne 0$ のとき,
極形式で表された複素数 $a=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$ に対して,
$\sqrt{a}$ は
%
\[
\sqrt{r}\left(
\cos{\dfrac{\theta}{2}}
+
i\sin{\dfrac{\theta}{2}}
\right),
\sqrt{r}\left\{
\cos{\left(\dfrac{\theta}{2}+\pi\right)}
+
i\sin{\left(\dfrac{\theta}{2}+\pi\right)}
\right\}
\]
%
の2個の複素数を表す。
$a=0$ のとき,
$a$ の平方根は $0$ だけである。
%
累乗根 (実数の―)
%
$n$ を2以上の自然数とする。
複素数 $a$ に対して,
$x^n=a$ となる複素数 $x$ を $a$ の
\ommindex{$\boldsymbol{n}$乗根}{nじょうこん}といい,
$\sqrt[n]{a}$ と表す。
$a\ne 0$ のとき,
極形式で表された複素数 $a=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$ に対して,
$\sqrt[n]{a}$ は
%
\[
\sqrt{r}\left(
\cos{\dfrac{\theta+2k\pi}{n}}
+
i\sin{\dfrac{\theta+2k\pi}{n}}
\right)
\quad
(k=0,1,2,\ldots, n-1)
\]
%
の $n$ 個の複素数を表す。
2乗根は\ommindex{平方根}{へいほうこん},
3乗根は\ommindex{立方根}{りっぽうこん}という。
平方根, 立方根, 4乗根, $\ldots$ を総称して
\ommindex{累乗根}{るいじょうこん}という。
%
累乗根 (複素数の―)
%
$n$ を2以上の自然数とする。
複素数 $a$ に対して,
$x^n=a$ となる複素数 $x$ を $a$ の
\ommindex{$\boldsymbol{n}$乗根}{nじょうこん}といい,
$\sqrt[n]{a}$ と表す。
$a\ne 0$ のとき,
極形式で表された複素数 $a=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$ に対して,
$\sqrt[n]{a}$ は
%
\[
\sqrt{r}\left(
\cos{\dfrac{\theta+2k\pi}{n}}
+
i\sin{\dfrac{\theta+2k\pi}{n}}
\right)
\quad
(k=0,1,2,\ldots, n-1)
\]
%
の $n$ 個の複素数を表す。
2乗根は\ommindex{平方根}{へいほうこん},
3乗根は\ommindex{立方根}{りっぽうこん}という。
平方根, 立方根, 4乗根, \ldots を総称して
\ommindex{累乗根}{るいじょうこん}という。
%
複素数
複素数
%
$x^2=-1$ を満たす数を $i$ と表し,
これを\ommindex{虚数単位}{きょすうたんい}という。
虚数単位を含む数
%
\[
z=a+ib \quad
(\mbox{$a$, $b$ は実数。$a+bi$ とかく場合もある})
\]
%
を\ommindex{複素数}{ふくそすう}といい,
$a$ を $z$ の\ommindex{実部}{じつぶ},
$b$ を $z$ の\ommindex{虚部}{きょぶ}という。
$z$ の実部を $\textrm{re}{z}$,
虚部を $\textrm{im}{z}$ と表す。
$a+i0$,
$0+ib$ はそれぞれ $a$, $ib$ と表す。
実数 $a$ は $a+i0$ の形の複素数である。 %
$a+ib=0$ となるのは $a=b=0$ の場合だけである。
複素数 $a+ib$ は $b\ne 0$ のとき\ommindex{虚数}{きょすう},
$a=0$, $b\ne 0$ のとき\ommindex{純虚数}{じゅんきょすう}という。
%
共役複素数
%
複素数 $z=a+ib$ に対して,
$a-ib$ を $z$ の\ommindex{共役複素数}{きょうやくふくそすう}といい,
$\overline{z}$ で表す。
%
複素平面
%
座標平面上の点 $(a,b)$ に複素数 $z=a+ib$ を対応させた平面を
\ommindex{複素平面}{ふくそへいめん}または
\ommindex{ガウス平面}{がうすへいめん}という。
複素平面の $x$ 軸上の点 $(a,0)$ には実数 $a$,
$y$ 軸上の点 $(0,b)$ には純虚数 $ib$ が対応している。
このため,
$x$ 軸を\ommindex{実軸}{じつじく},
$y$ 軸を\ommindex{虚軸}{きょじく} という。
%
複素数の絶対値
%
複素数 $z=a+ib$ に対して,
$\sqrt{a^2+b^2}$ を複素数 $z$ の\ommindex{絶対値}{ぜったいち2}といい,
$\left|z\right|$ で表す。
$\left|z\right|$ は複素平面上の原点 O と点 $z$ の距離である。
任意の複素数 $z$, $w$ に対して,
次の不等式が成り立つ。
%
\begin{align*}
\left|z\right|-\left|w\right|
\le
\left|z+w\right|
\le
\left|z\right|+\left|w\right|
\end{align*}
%
これを\ommindex{三角不等式}{さんかくふとうしき}という。
%
複素数の偏角
%
$0$ でない複素数 $z=a+ib$ に対して,
$r=\left|z\right|$ とするとき,
%
\[
\cos{\theta}=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}=\dfrac{a}{\,r\,},
\quad
\sin{\theta}=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}=\dfrac{b}{\,r\,}
\]
%
を満たす $\theta$ を 複素数 $z$ の\ommindex{偏角}{へんかく}といい,
$\arg{z}$ で表す。
$z=0$ のとき,
$z$ の偏角は任意とする。
%
複素数の極形式
%
複素数 $z=a+ib$ の絶対値を $r$,
偏角を $\theta$ とするとき,
$z$ は
%
\[
z=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})
\]
%
と表すことができる。
これを $z$ の\ommindex{極形式}{きょくけいしき}という。
極形式で表された2つの複素数 $z_1=r_1(\cos{\theta_1}+i\sin{\theta_1})$,
$z_2=r_2(\cos{\theta_2}+i\sin{\theta_2})$ について,
%
\[
z_1z_2
=
r_1r_2\{\cos{(\theta_1+\theta_1)}+i\sin{(\theta_1+\theta_1)}\},
\quad
\dfrac{z_1}{z_2}
=\dfrac{r_1}{r_2}\{\cos{(\theta_1-\theta_1)}+i\sin{(\theta_1-\theta_1)}\}
\]
%
が成り立つ。
これらの式は次のように表すことができる。
%
\begin{enumerate}
\item
$\left|z_1z_2\right|=\left|z_1\right|\left|z_2\right|$,
$\arg(z_1z_2)=\arg{z_1}+\arg{z_2}$
\item
$\left|\dfrac{z_1}{z_2}\right|
=
\dfrac{\left|z_1\right|}{\left|z_2\right|}$,
$\arg{\dfrac{z_1}{z_2}}=\arg{z_1}-\arg{z_2}$
\end{enumerate}
%
ド・モアブルの公式
%
$n$ を整数とするとき,
極形式で表された複素数 $\cos{\theta}+i\sin{\theta}$ について,
次が成り立つ。
%
\[
(\cos{\theta}+i\sin{\theta})^n=\cos{n\theta}+i\sin{n\theta}
\]
%
これを\ommindex{ド・モアブルの公式}{どもあぶるのこうしき}という。
%
応用例
- ブリッジ回路 (電気回路)
- 交流の表示法 (電気回路)
- 交流の表示法(加減算) (電気回路)
- 交流の表示法(乗算) (電気回路)
- 交流の表示法(除算) (電気回路)