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数学・工学事典 / 数学 / 基礎数学 / 関数とグラフ

関数

関数

集合 $X$ の各要素 $x$ に対して, 実数 $y$ をただ1つ対応させる規則があるとき, その規則を, \ommindex{定義域}{ていぎいき}を $X$ とする \ommindex{関数}{かんすう}という。 関数によって $x$ に対応する $y$ の値を $f(x)$ とかく。 記号 $f(x)$ を\ommindex{関数記号}{かんすうきごう}という。 このとき, 集合 $Y=\{f(x)\,|\,x\in X\}$ をこの関数の \ommindex{値域}{ちいき}という。 以下, この項目では, $X$ は実数の部分集合とする。 %

関数の増減

% $I$ を, 関数 $f(x)$ の定義域に含まれる区間であるとする。 $I$ の任意の点 $x_1$, $x_2$ に対して, % \begin{align*} x_1<x_2 \quad \mbox{ならば} \quad f(x_1)<f(x_2) \end{align*} % が成り立つとき, $f(x)$ は区間 $I$ で\ommindex{単調増加}{たんちょうぞうか}であるという。 また, % \begin{align*} x_1<x_2 \quad \mbox{ならば} \quad f(x_1)>f(x_2) \end{align*} % が成り立つとき, $f(x)$ は区間 $I$ で\ommindex{単調減少}{たんちょうげんしょう}であるという。 $f(x)$ が増加であるか減少であるかの状態を \ommindex{関数の増減}{かんすうのぞうげん}という。 関数 $f(x)$ が単調増加または単調減少であるとき, $f(x)$ は\ommindex{単調}{たんちょう}であるという。 %

関数の凹凸

% $I$ を, 関数 $f(x)$ の定義域に含まれる区間であるとする。 $I$ の任意の点 $x_1$, $x_2$ に対して, % \begin{align*} x_1<x<x_2 \quad \mbox{ならば} \quad f(x)<\frac{f(x_1)+f(x_2)}{2} \end{align*} % が成り立つとき, $f(x)$ は区間 $I$ で\ommindex{下に凸}{したにとつ}であるという。 また, % \begin{align*} x_1<x<x_2 \quad \mbox{ならば} \quad f(x)>\frac{f(x_1)+f(x_2)}{2} \end{align*} % が成り立つとき, $f(x)$ は区間 $I$ で\ommindex{上に凸}{うえにとつ}であるという。 $f(x)$ が下に凸であるか上に凸であるかの状態を \ommindex{関数の凹凸}{かんすうのおうとつ}という。 %

関数のグラフ

% 座標平面上の点集合 % \begin{align*} \text{C}=\{(x,y)\,|\,y=f(x)\} \end{align*} % を関数 $y=f(x)$ の\ommindex{グラフ}{ぐらふ}という。 一般に, 関数のグラフは平面上の曲線となる。 \vspace \ommindex{グラフの平行移動}{へいこういどう}  $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(a+p,b+q)$ は $y=f(x-p)+q$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=f(x-p)+q$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフを $x$ 軸の 正の方向に $p$, $y$ 軸の正の方向に $q$ だけ平行移動したものである。 \vspace \ommindex{グラフの対称移動}{たいしょういどう}  % \begin{enumerate} \item[(1)] $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(a,-b)$ は $y=-f(x)$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=-f(x)$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフと $y$ 軸に関して対称である。 \item[(2)] $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(-a,b)$ は $y=f(-x)$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=f(-x)$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフと $x$ 軸に関して対称である。 \item[(3)] $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(-a,-b)$ は $y=-f(-x)$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=f(-x)$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフと原点に関して対称である。 \end{enumerate} \vspace \noindent \ommindex{グラフの拡大}{かくだい}  $k\ne 0$ であるとする。 % \begin{enumerate} \item[(1)] $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(a,kb)$ は $y=kf(x)$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=kf(x)$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフを $y$ 軸方向に $k$ 倍したものである。 \item[(2)] $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点 $(a,b)$ に対して, 点 $(ka,b)$ は $y=f\left(\frac{x}{k}\right)$ のグラフ上の点である。 したがって, $y=f\left(\frac{x}{k}\right)$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $k$ 倍したものである。 \end{enumerate} %

偶関数と奇関数

% 関数 $f(x)$ の定義域 $X$ に含まれる任意の点 $x$ に対して, $-x$ もまた $X$ に含まれているとする。 % \begin{enumerate} \item[(1)] $f(-x)=f(x)$ が成り立つとき, $f(x)$ は\ommindex{偶関数}{ぐうかんすう}であるという。 偶関数のグラフは $y$ 軸に関して対称である。 \item[(2)] $f(-x)=-f(x)$ が成り立つとき, $f(x)$ は\ommindex{奇関数}{きかんすう}であるという。 偶関数のグラフは原点に関して対称である。 \end{enumerate} %

合成関数

% 2つの関数 $f(x)$ と $g(x)$ があり, $f(x)$ の値域が $g(x)$ の定義域に含まれているとする。 このとき, 関数 $f(g(x))$ を $f(x)$ と $g(x)$ の \ommindex{合成関数}{ごうせいかんすう}という。 %

逆関数

% 関数 $f(x)$ は区間 $X$ を定義域とする単調な関数であるとする。 このとき, $f(x)$ の値域 $Y$ に含まれる任意の $y$ に対して, $y=f(x)$ となる $x$ がただ1つ定まる。 $y$ に対して $x$ を対応させる関数を $y=f(x)$ の \ommindex{逆関数}{ぎゃくかんすう}といい, $x=f^{-1}(y)$ と表す。 定義から, % \begin{align*} f^{-1}\left(f(x)\right)=x , \quad f\left(f^{-1}(y)\right)=y \end{align*} % が成り立つ。 %

いろいろな関数

応用例

  • 流体の動力学(17) 水車における運動量の法則 (流れ学 (V-A-4 熱流体))

2次関数

2次関数

% $a$, $b$, $c$ を定数, $a\ne 0$ としたとき, 関数 $y=f(x)$ が $x$ の2次式 % \begin{align*} y=ax^2+bx+c \end{align*} % で表される関数を\ommindex{2次関数}{にじかんすう}という。 $y=ax^2$ のグラフは, 原点を\ommindex{頂点}{ちょうてん}とする \ommindex{放物線}{ほうぶつせん}である。 $y=ax^2+bx+c$ は % \begin{align*} y=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)-\frac{b^2-4ac}{4a^2} \end{align*} % と変形することができる。 これを $y=ax^2+bx+c$ の\ommindex{標準形}{ひょうじゅんけい}という。 したがって, $y=ax^2+bx+c$ のグラフは, $y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $-\frac{b}{2a}$, $y$ 軸方向に $-\frac{b^2-4ac}{4a^2}$ だけ平行移動したものになる。 とくに, $y=ax^2+bx+c$ のグラフの頂点の座標は % \begin{align*} \left(-\frac{b}{2a}, -\frac{b^2-4ac}{4a^2}\right) \end{align*} % である。 %

2次関数と2次方程式

% 一般に, 方程式 $f(x)=0$ が実数解 $x=\alpha$ をもつとき, 点 $(\alpha,0)$ は $y=f(x)$ のグラフと $x$ 軸との共有点である。 2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の実数解の個数は, 判別式 $D=b^2-4ac$ によって決まるから, 2次関数のグラフと $x$ 軸との共有点は次のように分類される。 % \begin{align*} \begin{array}{|c||c|c|} \hline & ax^2+bx+c=0 & y=ax^2+bx+c \rule[-1zh]{0zw}{3zh} \\ \hline D>0 & \mbox{2つの異なる実数} & \mbox{$x$ 軸と2点で交わる} \rule[-1zh]{0zw}{3zh} \\ \hline D=0 & \mbox{1つの実数解 (2重解)} & \mbox{$x$ 軸と接する} \rule[-1zh]{0zw}{3zh} \\ \hline D<0 & \mbox{虚数解} & \mbox{$x$ 軸と共有点をもたない} \rule[-1zh]{0zw}{3zh} \\ \hline \end{array} \end{align*} % %

2次関数と2次不等式

% 一般に, 不等式 $f(x)<0$ の解は $y=f(x)$ のグラフが $x$ 軸より上にある $x$ の範囲であり, 不等式 $f(x)>0$ の解は $y=f(x)$ のグラフが $x$ 軸より下にある $x$ の範囲である。 2次不等式の解は2次関数 $y=ax^2+bx+c$ のグラフによって解くことができる。 ここでは $a>0$ のときだけを扱う。 (1) $D>0$ のとき $y=ax^2+bx+c$ のグラフは $x$ 軸と異なる2点で交わり, 2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ は2つの異なる実数解 $\alpha$, $\beta$ ($\alpha<\beta$) をもつ。 したがって, 不等式の解は次のようになる。 % \begin{align*} \begin{array}{|c|c|} \hline 不等式 & 解 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c>0 & x<\alpha, \quad x>\beta \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\ge 0 & x\le\alpha, \quad x\ge \beta \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c<0 & \alpha<x<\beta \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\le 0 & \alpha\le x \le\beta \\[0.5em] \hline \end{array} \end{align*} (2) $D=0$ のとき $y=ax^2+bx+c$ のグラフは $x$ 軸と2点で接し, 2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ は2重解 $\alpha$ をもつ。 したがって, 不等式の解は次のようになる。 % \begin{align*} \begin{array}{|c|c|} \hline 不等式 & 解 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c>0 & x\ne\alpha \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\ge 0 & すべての実数 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c<0 & 解なし \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\le 0 & x=\alpha \\[0.5em] \hline \end{array} \end{align*} (3) $D<0$ のとき $y=ax^2+bx+c$ のグラフは $x$ 軸と共有点をもたず, 任意の $x$ に対して $ax^2+bx+c>0$ である。 したがって, 不等式の解は次のようになる。 % \begin{align*} \begin{array}{|c|c|} \hline 不等式 & 解 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c>0 & すべての実数 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\ge 0 & すべての実数 \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c<0 & 解なし \\[0.5em] \hline ax^2+bx+c\le 0 & 解なし \\[0.5em] \hline \end{array} \end{align*}