三角関数
三角関数
%
座標平面上の原点を中とする半径 $1$ の円を
\ommindex{単位円}{たんいえん}という。
角 $\theta$ に対する動径が単位円と交わる点を P$(X,Y)$ とするとき,
$X$, $Y$ は角 $\theta$ の関数となる。
これらの関数を
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\begin{align*}
X=\cos{\theta}
, \quad
Y=\sin{\theta}
\end{align*}
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と表す。
$X=\cos{\theta}$ を\ommindex{余弦関数(コサイン)}{よげんかんすう},
$Y=\sin{\theta}$ を\ommindex{正弦関数(サイン)}{正弦関数}という。
また,
$\cos{\theta}\ne 0$ ($\theta\ne \frac{\pi}{2}+2n\pi$, $n$ は整数)である
$\theta$ に対して,
\ommindex{正接関数(タンジェント)}{せいせつかんすう}を
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\begin{align*}
\tan{\theta}=\frac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}
\end{align*}
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と定める。
これら3つの関数を総称して\ommindex{三角関数}{さんかくかんすう}という。
三角関数の相互関係
定義から,
任意の実数 $\theta$ について
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\begin{align*}
\cos^2{\theta}+\sin^2{\theta}=1
\end{align*}
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が成り立つ。
さらに,
この式を $\cos^2{\theta}$ で割ると
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\begin{align*}
1+\tan^2{\theta}=\frac{1}{\cos^2{\theta}}
\end{align*}
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が成り立つ。
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三角関数の基本公式
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\begin{enumerate}
\item[(1)]
$n$ が整数のとき,
角 $\theta+2n\pi$ に対する動径は,
角 $\theta$ に対する動径と同じであるから
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\begin{align*}
\cos(\theta+2n\pi)&=\cos{\theta}
\\
\sin(\theta+2n\pi)&=\sin{\theta}
\\
\tan(\theta+2n\pi)&=\tan{\theta}
\end{align*}
%
が成り立つ。
\item[(2)]
角 $-\theta$ に対する動径は,
角 $\theta$ に対する動径と $X$ 軸に関して対称であること,
および正接関数の定義から,
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\begin{align*}
\cos(-\theta)&=\cos{\theta}
\\
\sin(-\theta)&=-\sin{\theta}
\\
\tan(-\theta)&=-\tan{\theta}
\end{align*}
%
が成り立つ。
\item[(3)]
角 $\displaystyle \frac{\pi}{\,2\,}-\theta$ に対する動径は,
角 $\theta$ に対する動径と直線 $Y=X$ に関して対称あることから
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\begin{align*}
\cos\left(\displaystyle \frac{\pi}{\,2\,}-\theta\right)
&=\sin{\theta}
\\
\sin\left(\displaystyle \frac{\pi}{\,2\,}-\theta\right)
&=\cos{\theta}
\\
\tan\left(\displaystyle \frac{\pi}{\,2\,}-\theta\right)
&=\displaystyle \frac{1}{\tan{\theta}}
\end{align*}
%
が成り立つ。
\item[(4)]
角 $\pi-\theta$ に対する動径は,
角 $\theta$ に対する動径と $Y$ 軸に関して対称あることから
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\begin{align*}
\cos(\pi-\theta)
&
=-\cos{\theta}
\\
\sin(\pi-\theta)
&
=\sin{\theta}
\\
\tan(\pi-\theta)
&
=-\tan{\theta}
\end{align*}
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が成り立つ。
\end{enumerate}
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三角関数のグラフ
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三角関数 $y=\sin{x}$,
$y=\cos{x}$ は次の性質をもつ。
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\begin{enumerate}
\item[(1)]
定義域は実数全体,
値域は $-1\le y\le 1$ である。
\item[(2)]
周期を $2\pi$ とする周期関数である。
\item[(3)]
$y=\cos{x}$ のグラフは,
$y=\sin{x}$ のグラフを $x$ 軸方向に $\frac{\pi}{\,2\,}$ だけ
平行移動したものである。
\item[(4)]
$\sin{x}=0$ の解は $x=n\pi$ ($n$ は整数) であり,
$x$ がこの値のとき $y=\sin{x}$ のグラフは $x$ 軸と交わる。
\item[(5)]
$\cos{x}=0$ の解は $x=\frac{\pi}{\,2\,}+n\pi$ ($n$ は整数) であり,
$x$ がこの値のとき $y=\cos{x}$ のグラフは $x$ 軸と交わる。
\end{enumerate}
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三角関数 $y=\tan{x}$ のグラフは次の性質をもつ。
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\begin{enumerate}
\item[(1)]
定義域は $x\ne \frac{(2n+1)\pi}{2}$ ($n$ は整数)を満たす実数全体,
値域は実数全体である。
\item[(2)]
周期を $\pi$ とする周期関数である。
\item[(3)]
$x\ne \frac{(2n+1)\pi}{2}$ ($n$ は整数) のとき,
$y=\tan{x}$ の値は定義されない。
直線 $x=\frac{(2n+1)\pi}{2}$ は $y=\tan{x}$ のグラフの漸近線である。
\item[(4)]
$-\frac{\pi}{\,2\,}< x < \frac{\pi}{\,2\,}$ で単調増加である。
\item[(5)]
$\tan{x}=0$ の解は $x=n\pi$ ($n$ は整数) であり,
$x$ がこの値のとき $y=\tan{x}$ のグラフは $x$ 軸と交わる。
\end{enumerate}
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逆三角関数
三角関数の\ommindex{逆三角関数}{ぎゃくさんかくかんすう}という。
三角関数は単調関数でないため,
逆関数が存在するように定義域に制限をつける必要がある。
$y=\sin{x}$,
$y=\cos{x}$,
$y=\tan{x}$ の逆関数をそれぞれ次のように定める。
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\begin{enumerate}
\item[(1)]
$y=\sin{x}$
$\left(-\frac{\pi}{\,2\,}\le x \le \frac{\pi}{\,2\,}\right)$ の
逆関数を $x=\sin^{-1}{y}$ と表し,
これを\ommindex{逆正弦関数(アークサイン)}{ぎゃくせいげんかんすう}という。
すなわち,
$\sin^{-1}{y}$ は $y=\sin{x}$ を満たす $x$ のうち,
$-\frac{\pi}{\,2\,}\le x \le \frac{\pi}{\,2\,}$ の範囲の値である。
\item[(2)]
$y=\cos{x}$
$\left(0\le x \le \pi\right)$ の
逆関数を $x=\tan^{-1}{y}$ と表し,
これを\ommindex{逆余弦関数(アークコサイン)}{ぎゃくよげんかんすう}という。
すなわち,
$\cos^{-1}{y}$ は $y=\cos{x}$ を満たす $x$ のうち,
$0\le x \le \pi$ の範囲の値である。
\item[(3)]
$y=\tan{x}$
$\left(-\frac{\pi}{\,2\,} < x < \frac{\pi}{\,2\,}\right)$ の
逆関数を $x=\tan^{-1}{y}$ と表し,
これを\ommindex{逆正接関数(アークサイン)}{ぎゃくせいせつかんすう}という。
すなわち,
$\tan^{-1}{y}$ は $y=\tan{x}$ を満たす $x$ のうち,
$-\frac{\pi}{\,2\,} < x < \frac{\pi}{\,2\,}$ の範囲の値である。
\end{enumerate}
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応用例
- ランキン土圧 (土質力学)
- 交流電力 (電気回路)
- 摩擦 (工業力学(V-A-3 力学))
- 応力とひずみ(1) (材料力学(V-A-3 力学))
- 回転運動 (工業力学(V-A-3 力学))
- 振動の基礎(1) 調和振動 (機械力学(V-A-3 力学))
- 往復機械の力学(2) (機械力学(V-A-3 力学))
- 応力とひずみ(4) (材料力学(V-A-3 力学))
- 流体の静力学(6) タンク内圧力 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の動力学(6) オイラーの運動方程式とベルヌーイの定理 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 応力とひずみ(5) (材料力学(V-A-3 力学))
- ふく射伝熱(5) 複雑な物体間のふく射と形態係数 (伝熱工学(V-A-4 熱流体))
- 流体の静力学(9) 傾斜平板に作用する全圧力 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の性質(11) 表面張力と毛細管現象 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の性質(12) 表面張力と毛細管現象 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の動力学(16) 曲管における運動量の法則 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- RL直列回路 (電気回路)
- 周波数と周期,実効値と平均値 (電気回路)
- 位相進み-遅れ (電気回路)
- フェーザ表示から瞬時値 (電気回路)
- 複素数表示から瞬時値 (電気回路)
- 力と運動の法則 (工業力学(V-A-3 力学))
- 流体の静力学(10) 曲面に作用する全圧力 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の静力学(11) 浮揚体の安定性 (流れ学 (V-A-4 熱流体))
- 流体の静力学(12) 並進運動の相対的静止 (流れ学 (V-A-4 熱流体))