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例題集 / 物理 / 力学 / 摩擦力

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難易度

摩擦抵抗を受ける運動

知識・記憶レベル   難易度:
抵抗のない滑らかな面の上を 速度 $v_0\,\,\left[\textrm{m}/\textrm{s}\right]$ で運動している 質点 P が, 粗い面にさしかかり, 面の抵抗を受けて停止した。 質点 P の質量を $m\,\left[\textrm{kg}\right]$, 粗い面の動摩擦係数を $\mu$ とするとき, 粗い面にさしかかってから停止するまでの時間を求めよ。

解答例・解説

質点 P が粗い面にさしかかってから $t$ 秒後の P の 位置を $x(t)$, 速度を $v(t)$ とする。 粗い面上で, 運動する質点 P が受ける摩擦力の大きさを $F$ とすれば, % \begin{align*} F=mg \mu \end{align*} % が成り立つ。 摩擦力は運動と逆の方向に働くから, 粗い面上での運動方程式は % \begin{align*} -mg\mu=mx' '(t) \end{align*} % となる。 $x'(t)=v(t)$ であるから, この微分方程式は % \begin{align*} v'(t)=-g\mu \end{align*} % となる。 これを積分することによって, 一般解 % \begin{align*} v(t)=C-g\mu t \quad (\mbox{$C$ は任意定数}) \end{align*} % が得られる。 与えられた条件から $v(0)=v_0$ であるから, % \begin{align*} v_0=C \quad \mbox{よって} \quad v(t)=v_0-g\mu t \quad \cdots \cdots [1] \end{align*} % となる。 速度を積分すれば位置が得られる。 $x(0)=0$ であることに注意すれば, % \begin{align*} x(t)=v_0t-\frac{1}{2}g\mu t^2 \quad \cdots \cdots [2] \end{align*} % となる。 質点 P が制止する時刻を $t=t_0\,\,\left[\textrm{s}\right]$ とすれば, [1] から, % \begin{align*} v(t_0)=v_0-g\mu t_0=0 \quad \mbox{よって} \quad t_0=\frac{v_0}{g\mu} \end{align*} % となる。 粗い面にさしかかってから静止するまでに動いた距離 $s$ は, 時刻 $t=t_0$ における物体の位置 $x(t_0)$ と等しいから, % \begin{align*} s = x(t_0) = v_0t_0-\frac{1}{2}g\mu t_0^2 = \frac{v_0^2}{2g\mu} \,\left[\textrm{m}\right] \end{align*} % である。

車の制動時間と制動距離

知識・記憶レベル   難易度:
初期速度$36\rm{km/h}$の速さで走っていた車が急ブレーキをかけたら,車輪がスリップして$10\rm{m}$すべって止まった。 (a) 車輪と道路との間の動摩擦係数はいくらか? (b) 制動時間(急ブレーキをかけてから止まるまでにかかった時間)はいくらか? (c) 初速が2倍の時,制動距離(止まるまでにスリップする距離)はいくらか?

解答例・解説

(a) 車の質量$m[\rm{kg}]$、重力加速度$g=9.8\rm{m}/\rm{s}^2$として,垂直抗力の大きさ$N[\rm{N}]$は,重力の大きさに等しいから, \[ N = mg \] ブレーキによる摩擦力$F$ [N]は、車輪と道路との間の動摩擦係数$\mu’$、進行方向を正として, \[ F = - \mu 'N = - \mu 'mg \] 運動方程式は,加速度$a$として, \[ - \mu 'mg = ma,\quad \therefore a = - \mu 'g \] 速度$v$は,時刻$t$で積分し,初速$v_0=36\rm{km/h}=10\rm{m/s}$より, \[ v = - \mu 'gt + {v_0}  …[1]\] 位置$x$は,時刻$t$で積分し,初期位置$x_0=0\rm{m}$として, \[ x = - \frac{1}{2}\mu 'g{t^2} + {v_0}t  …[2]\] [1],[2]式より,時刻$t$を消去して, % \begin{align*} x &= - \frac{1}{2}\mu 'g{\left( { - \frac{{v - {v_0}}}{{\mu 'g}}} \right)^2} + {v_0}\left( { - \frac{{v - {v_0}}}{{\mu 'g}}} \right) \\ &= - \frac{1}{2}\frac{{{{\left( {v - {v_0}} \right)}^2}}}{{\mu 'g}} - \frac{{{v_0}\left( {v - {v_0}} \right)}}{{\mu 'g}} = - \frac{{{{\left( {v - {v_0}} \right)}^2} + 2{v_0}\left( {v - {v_0}} \right)}}{{2\mu 'g}}\\ &= \frac{{\left( {v - {v_0} + 2{v_0}} \right)\left( {v - {v_0}} \right)}}{{ - 2\mu 'g}} = \frac{{\left( {v + {v_0}} \right)\left( {v - {v_0}} \right)}}{{ - 2\mu 'g}}\\ &= \frac{{{v^2} - {v_0}^2}}{{ - 2\mu 'g}}\\ \end{align*} % 従って,停止する(速度$v=0$)までの制動距離$x=10\rm{m}$より,次式で与えられる。 \[ x = \frac{{{v^2} - {v_0}^2}}{{ - 2\mu 'g}} = \frac{{{0^2} - {v_0}^2}}{{ - 2\mu 'g}} = \frac{{{v_0}^2}}{{2\mu 'g}}  …[3]\] \[ \mu ' = \frac{{{v_0}^2}}{{2gx}} = \frac{{{{10}^2}}}{{2 \times 9.8 \times 10}} \cong 0.51  …[4]\] 【別解】 エネルギー原理: 運動エネルギー変化=成された仕事 \[ \frac{1}{2}m{v^2} - \frac{1}{2}m{v_0}^2 = F \cdot \left( {x - {x_0}} \right) = ma \cdot \left( {x - {x_0}} \right) \] \[ \therefore {v^2} - {v_0}^2 = 2a\left( {x - {x_0}} \right) \] からの導出も可能で,[4]式と同一となる。 \[ {0^2} - {v_0}^2 = 2\left( { - \mu 'g} \right)\left( {x - 0} \right),\quad \therefore \mu ' = \frac{{{v_0}^2}}{{2gx}} \] (b) 上記[1]式に[2]式を代入して,停止する(速度$v=0$)までの制動時間$t$は,次式となる。 \[ v = - \mu 'gt + {v_0} = - \frac{{{v_0}^2}}{{2gx}}gt + {v_0} = - \frac{{{v_0}^2}}{{2x}}t + {v_0} = 0, \quad \frac{{{v_0}}}{{2x}}t = 1 \] \[ \therefore t = \frac{{2x}}{{{v_0}}} = \frac{{2 \times 10}}{{10}} = 2.0\rm{s} \] (c) 上記[3]式より,初速が${v_0}^\prime = 2{v_0}[\rm{m/s}]$の場合の,制動距離$x’[\rm{m}]$は,次式で与えられる。 \[ x' = \frac{{{{({v_0}^\prime )}^2}}}{{2\mu 'g}} = \frac{{{{\left( {2{v_0}} \right)}^2}}}{{2\frac{{{v_0}^2}}{{2gx}}g}} = 4x = 4 \times 10 = 40\rm{m} \]