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例題集 / 機械 / 伝熱工学(V-A-4 熱流体) / ふく射伝熱

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難易度

ふく射伝熱(1) ふく射の基本法則

知識・記憶レベル   難易度:
次の$(\ 1\ )\sim(\ 10\ )$に当てはまる語句を答えよ. 熱ふく射は,電磁場の一部であり,すべての温度ある物体から発散される. 単位表面積から単位時間当たりに放出されるエネルギーを$(\ \ 1\ \ )$$E\rm{ [W/m^2]}$(あるいは放射能)と呼ぶ. ふく射は,さまざまな波長の電磁場からなり,単位波長幅$\rm{d\lambda}$当たりの放射能$E_\lambda\rm{[W/(m^2\cdot\mu m)]}$を$(\ \ 2\ \ )$(あるいは単色放射能)と呼ぶ. したがって,$E$は$E_\lambda$を全波長について積分したものであるので, \[E=(\ \ 3\ \ )\hspace{30px}\cdots(a)\] と表現される. 一般に,$E$あるいは$E_\lambda$は,物体表面の温度$T[\rm{K}]$と性状によって変化する. 放出される最大の放射能を$(\ \ 4\ \ )$$E_b[\rm{W/m^2}]$と呼び,それに対応する$(\ \ 2\ \ )$を$(\ \ 5\ \ )$$E_{b\lambda} [\rm{W/(\rm{m^2}\cdot\rm{\mu}m)}]$と呼ぶ. また,そのような状態にある物体を$(\ \ 6\ \ )$と呼ぶ. $E_{b\lambda}$は,次式で表現される. \[E_{b\lambda}=\frac{c_1}{\lambda ^5\left[\exp\left(\frac{c_2}{\lambda T}\right)-1\right]}\hspace{30px} \cdots(b)\] (ここで,$c_1=2\pi c_0^2/h$ ,$c_2=c_0h/k$ である.[$c_0$:光速度,$h$:プランク定数,$k$:ボルツマン定数]である.) これを$(\ \ 7\ \ )$の法則と呼ぶ. 式$(b)$を全波長にわたって積分し,次のステファン$\cdot$ボルツマンの法則を得る. \[E_b(T)=(\ \ 8\ \ )\hspace{30px}\cdots (c)\] ここで,$\sigma=(\ \ 9\ \ )\rm{[W/(m^2\cdot K^4)]}$をステファン$\cdot$ボルツマン定数と呼ぶ. $(\ \ 5\ \ )$のスペクトル分布曲線において最大値を与える波長$\lambda_{max}$は,物体の温度$T[\rm{K}]$に反比例する. このことは,式$(b)$より \[\frac{dE_{b\lambda}}{d\lambda}=0\] となるように,$E_{b\lambda}$の最大値を見つけることで与えられ,    \[\lambda_{max}T=0.002897\,\rm{mK}\] となる.この関係を$(\ \ 10\ \ )$と呼ぶ.

解答例・解説

$(1)$ 全ふく射熱流束 $(2)$ 単色ふく射熱流束 $(3)$ $\int_0^\infty E_{\lambda}d\lambda$ $(4)$ 黒体ふく射熱流束 $(5)$ 単体黒体ふく射熱流束 $(6)$ 黒体 $(7)$ プランク $(8)$ $\sigma T$ $(9)$ $5.67\times10^{-8}$ $(10)$ ウィーンの変位則

ふく射伝熱(2) 黒体全ふく射と太陽系

適用レベル   難易度: ★★★
太陽から受ける地球大気表面の熱流束を太陽定数と呼ぶ. 太陽定数$E_0= 1370 \,\rm{W/m^2}$,太陽の半径$R_s=6.96×10^8 \,\rm{m}$,太陽と地球の平均距離$L=1.5×10^{11} \,\rm{m}$としたとき,太陽の表面温度$T_s$を求めよ. ただし,太陽を黒体とみなせ.

解答例・解説

ステファン--ボルツマンの法則により,太陽表面の黒体ふく射熱流束は, \[E_s=\sigma T_s^4\hspace{30px}\cdots(1)\] (ここで,$\sigma=5.67×10^{-8} \,\rm{W/(m^2K^4)}$はステファン•ボルツマン定数) 太陽表面を球体①とし,地球公転軌道は太陽を中心とした球体②に含まれるものとする. 球体①と球体②におけるふく射エネルギー(ふく射熱流束×面積)は保存されるので, \[E_s \left(4\pi R_s^2\right)= E_s \left(4\pi L^2\right)\] \[E_sR_s^2=E_0L^2\hspace{30px}\cdots(2)\] 式$(2)$に式$(1)$を代入して, \[\sigma T_s^4 R_s^2= E_0 L^2\] \[ \begin{align}T_s&=\left(\frac{E_0 L^2}{\sigma R_s^2}\right)^{\frac{1}{4}}\\ &=\left\{\frac{1370\times\left(1.5\times10^{11}\right)^2}{5.67\times10^{-8}\times\left(6.96\times10^8\right)^2}\right\}^{\frac{1}{4}}\\ &=5.79\times10^3\,\rm{K}\end{align} \]

ふく射伝熱(3) ふく射率と全ふく射熱流束

理解レベル   難易度: ★★
$800^\circ\rm{C}$に加熱された鉄板からの$(\ 1\ )$ふく射熱流束を求めよ. ただし,鉄板の表面の全ふく射率を$0.25$とする. また,この鉄板の表面に耐熱黒ラッカーを塗った場合の$(\ 2\ )$ふく射熱流束を求めよ. ただし,耐熱黒ラッカーの全ふく射率を$0.9$とし,透過はないものとする.

解答例・解説

$(1)$ 表面のふく射熱流束$E$は, \[\begin{align}E&=\varepsilon\sigma T^4\\  &=0.25\times5.67\times10^{-8}\times(800+273.15)^4\\ &=1.88\times 10^4 \,\rm{W/m^2} \end{align}\] $(2)$ 表面のふく射熱流束$E$は, \[\begin{align}E&=\varepsilon\sigma T^4\\  &=0.9\times 5.67\times 10^{-8}\times (800+273.15) ^4\\ &=6.77\times 10^4 \,\rm{W/m^2} \end{align}\]

ふく射伝熱(4) 平行平板間のふく射

適用レベル   難易度: ★★★
温度$T_1=700 \,\rm{K}$,ふく射率$\varepsilon_1=0.4$のステンレス製の平面壁と,温度$T_2=350\,\rm{ K}$,ふく射率$ε_2=0.9$のガラス製の平面壁が平行に置かれている. ステンレス壁からガラス壁へのふく射熱流束を求めよ. ただし,ふく射率と吸収率は等しいものとし,各壁の間隔は比較的小さいものとする.

解答例・解説

図を参考に考える. ふく射率と吸収率はともに$\varepsilon$であり透過率は$0$であるから,反射率は$1-\varepsilon$となる. ステンレス壁から放出される熱流束$q_1$は,それ自体からのふく射熱流束$E_1$とガラス壁からの熱流束$q_2$を反射した分の合計となるので, \[\begin{align} q_1&= E_1+ (1−\varepsilon_1)q_2\\ &= \varepsilon_1\sigma T_1^ 4+ (1−\varepsilon_1)q_2 \hspace{30px}\cdots(1) \end{align}\] 同様にガラス壁から放出される熱流束$q_2$は, \[\begin{align} q_2&= E_2+ (1−\varepsilon_2)q_1\\ &= \varepsilon_2\sigma T_2^4+ (1−ε_2)q_1\hspace{30px}\cdots(2) \end{align}\] 式$(1)$と式$(2)$を連立して,$q_1$ ,$q_2$について解くと, \[ q_1=\frac{E_1+(1-\varepsilon_1)E_2}{1-(1-\varepsilon_1)(1-\varepsilon_2)} \] \[ q_2=\frac{E_2+(1-\varepsilon_2)E_1}{1-(1-\varepsilon_1)(1-\varepsilon_2)} \] 以上により,ステンレス壁からガラス壁へ伝わる正味の熱流束は,$q_1$と$q_2$の差に等しいので, \[\begin{align} q&= q_1−q_2\\ &=\frac{\varepsilon_1\varepsilon_2\sigma(T_1^4-T_2^4)}{1-(1-\varepsilon_1)(1-\varepsilon_2)}\\ &=\frac{\sigma(T_1^4-T_2^4)}{\frac{1}{\varepsilon_1}+\frac{1}{\varepsilon_2}-1}\\ &=\frac{5.67\times10^{-8}(700^4-350^4)}{\frac{1}{0.4}+\frac{1}{0.9}-1}\\ &=4.89\times10^3\,\rm{W/m^2}\\ &=4.89\,\rm{kW/m^2} \end{align}\] %=image:/media/2015/01/15/142125755345395600.png:

ふく射伝熱(5) 複雑な物体間のふく射と形態係数

適用レベル   難易度: ★★★
図に示すように,火床の側に人が立っている. 複雑な火床の形態を,平面積$1.5\,\rm{ m^2}$,平均温度$1500\,\rm{ K}$で代表させ,一方,火床に面した人体の形態を平面積$0.8\,\rm{m^2}$,体表温度$310\,\rm{ K}$で代表させる. 火床の面心$\rm{a}$と人体の面心$\rm{b}$との距離は$1.8 \,\rm{m}$, 線分$\rm{ab}$と火床面との角度は$35^\circ$,線分$\rm{ab}$と人体面との角度は$55^\circ$であるとする. 人体は裸体でふく射率$\varepsilon=0.95$であり,火床のふく射率と等しいとしたとき,次の問いに答えよ. ただし,二面間の距離に比べて伝熱面積は十分小さく,また反射率も小さいため,反射による再入射は無視できるものとする. $(1)$ 人体が火床から受ける熱量$Q$を概算せよ. $(2)$ 火床からみた人体の形態係数$F_{12}$を求めよ. %=image:/media/2015/01/15/142125757222235400.png:

解答例・解説

$(1)$ 火床と人体の形は複雑であるので,適当な平均値を用いた簡易解法を試みる. \[r_m=1.8 \,{\rm{m}},\ \ \theta_{1m}=90-35=55^\circ, \ \ \theta_{2m}=90-55=35^\circ, \] \[ A_1=1.5 \,\rm{m^2}, \ \ T_1=1500 \,\rm{K}, \ \ A_2=0.8 \,\rm{m^2}, \ \ T_2=310 \,\rm{K}\] ふく射率$\varepsilon_1$の表面$A_1$から放射され,表面$A_2$に入射する放射エネルギーは,表面$A_2$の吸収率$\varepsilon_2$であるから, \[Q_{12}=\frac{\varepsilon_1\sigma T_1^4\cos\theta_{1m}\cos\theta_{2m}}{\pi r_m^2}A_1A_2\varepsilon_2\] 同様に,表面$A_2$から放射され,表面$A_1$に入射する放射エネルギーは, \[Q_{21}=\frac{\varepsilon_2\sigma T_2^4\cos\theta_{2m}\cos\theta_{1m}}{\pi r_m^2}A_2A_1\varepsilon_1\] したがって,表面$A_1$から表面$A_2 $への正味の熱量は, \[\begin{align}Q&=Q_{12}-Q_{21}\\ &=\frac{\sigma( T_1^4ーT_2^4)\varepsilon_1\varepsilon_2\cos\theta_{1m}\cos\theta_{2m}}{\pi r_m^2}A_1A_2\\ &=\frac{5.67\times10^{-8}\times(1500^4ー10^4)\times0.95^2\times\cos55\times \cos35}{\pi\times1.8^2}\\ &=11.9\times 10^3\,\rm{W}\\ &=11.9\,\rm{kW}\end{align}\] $(2)$ 形態係数の考え方(表面$A_i$より放射されるふく射エネルギーのうち,表面$A_j$ に届くものの割合を形態係数$F_{ij}$と定義する)より,表面$A_2$が吸収するエネルギーは,他方,表面$A_1$が吸収するエネルギーは$(\varepsilon_1\sigma T_1^4)A_1F_{12}\varepsilon_2$となる. したがって,熱交換量は, \[Q=(\varepsilon_1\sigma T_1^4)A_1F_{12}\varepsilon_2-(\varepsilon_2\sigma T_2^4)A_2F_{21}\varepsilon_1\] 形態係数の対象性から,$A_1F_{12}=A_2F_{21}$が成立するので, \[Q=\sigma (T_1^4ーT_2^4)\varepsilon_1\varepsilon_2A_1F_{12}\] よって,問$(1)$の表現との比較から, \begin{align}F_{12}&=\frac{\cos\theta_{1m}\cos\theta_{2m}}{\pi r_m^2}A_2\\ &=\frac{\cos55\times\cos35}{\pi\times1.8^2}\times0.8\\ &=3.69\times10^2\end{align}