正方行列の対角化
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$\mathbb{E}$,
$\widetilde{\mathbb{E}}$ をベクトル空間 $V$ の2つの基底とし,
$\mathbb{E}$ から $\widetilde{\mathbb{E}}$ への
基底の変換行列を $P$ とする。
また,
$\varphi$ を $V$ の線形変換とし,
基底 $\mathbb{E}$ に関する表現行列を $A$ とする。
このとき,
を $V$ の線形変換とし,
基底 $\mathbb{E}$ に関する $\varphi$ の表現行列を $B$ とすれば,
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\begin{align*}
B=P^{-1}AP
\end{align*}
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が成り立つ。
一般に,
正方行列 $A$ に対して,
$B=P^{-1}AP$ が対角行列になるような
正則行列 $P$ が存在するとき,
$A$ は\ommindex{対角化可能}{たいかくかかのう}であるといい,
そのとき,
正則行列 $P$ を $A$ の\ommindex{対角化行列}{たいかくかぎょうれつ}という。
対角化行列 $P$ および対角行列 $B$ を求めることを,
行列 $A$ を\ommindex{対角化}{たいかくか}するという。
対角化するということは,
線形変換 $\varphi$ の表現行列が対角行列となるような
基底を求めることでもある。
すべての行列が対角化可能であるわけではない。
しかし,
対称行列 $A$ は対角化可能で,
対角化行列として直交行列を選ぶことができる。
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固有値と固有ベクトル
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$n$ 次正方行列 $A$ に対して
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\begin{align*}
A\vt{x}=\lambda\vt{x},
\quad
\vt{x}\ne \vt{0}
\end{align*}
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を満たすスカラー $\lambda$ とベクトル $\vt{x}$ があるとき,
$\lambda$ を $A$ の\ommindex{固有値}{こゆうち},
$\vt{x}$ を固有値 $\lambda$ に属する
\ommindex{固有ベクトル}{こゆうべくとる}という。
$\lambda$ が $A$ の固有値であるとき,
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\begin{align*}
\{\vt{x}\,|\, A\vt{x}=\lambda\vt{x}\}
\end{align*}
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はベクトル空間となる。
これを固有値 $\lambda$ に属する
\ommindex{固有空間}{こゆうくうかん}という。
固有空間は,
固有値 $\lambda$ に属する固有ベクトル全体に
零ベクトルを加えたものである。
条件 \maru{1} を満たす $\vt{x}$ は,
斉次連立1次方程式
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\begin{align*}
(\lambda E-A)\vt{x}=\vt{0}
\end{align*}
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の自明でない解である。
自明でない解が存在するための必要十分条件は
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\begin{align*}
\left|\lambda E-A\right|=0
\end{align*}
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となることである。
この方程式を $A$ の
\ommindex{固有方程式}{こゆうほうていしき}という。
行列 $A$ が $n$ 次正方行列であるとき,
固有方程式は $\lambda$ についての $n$ 次方程式となるから,
重複も含めて $n$ 個の解 $\lambda_i$ $(i=1,2,\cdots, k)$ がある。
$\vt{p}_i$ を固有値 $\lambda_i$ に属する固有ベクトルとする。
このとき,
$\{\vt{p}_1, \vt{p}_2,\ldots, \vt{p}_n\}$ が線形独立であるように
選ぶことができれば,
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\begin{align*}
P=\left(\begin{array}{cccc}
\vt{p}_1 & \vt{p}_2 & \ldots & \vt{p}_n
\end{array}\right)
\end{align*}
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とおくと,
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\begin{align*}
P^{-1}AP
=
\left(\begin{array}{cccc}
\lambda_1 & 0 & \cdots & 0
\\
0 & \lambda_2 & \cdots & 0
\\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots
\\
0 & 0 & \cdots & \lambda_n
\end{array}\right)
\end{align*}
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となる。
したがって,
行列 $A$ は対角化可能である。
とくに,
$A$ が実対称行列であるとき,
$A$ は対角化可能であり,
$P$ として直交行列を選ぶことができる。
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