図のように,
水平面と角 $\theta$ をなす斜面上に,
半径 $R$,
質量 $M$ の円盤をおくと,
円盤は滑らかに回転しながら転がり落ちる。
円盤と斜面の間には静止摩擦力fが働き,
滑りは無いものとする。
斜面を下る方向に $x$ 軸を設定するとき,
次の問いに答えよ。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
中心軸まわりの,
円盤の慣性モーメント $I$ を求めよ。
\item[(2)]
時刻 $t$ における円柱の重心の位置 $x(t)$ を求めよ。
ただし,
$t=0$ における円柱の重心の速度を $v_0=0$,
位置を $x_0=0$ とする。
\end{enumerate}
%
%=image:/media/2014/08/29/140931437348764300.jpg:
解答例・解説
%=image:/media/2014/08/29/140931425073443800.jpg:
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
円盤の面密度を $\sigma$ とすれば,
円盤の質量は $M$ であるから,
%
\begin{align*}
\sigma=\frac{M}{\,\pi R^2\,}
\end{align*}
%
となる。
円盤の内部の領域を $D$ とし,
$D$ を面積が $dS$ の小領域に分割し,
その小領域の原点からの距離を $r$ とすれば,
%
\begin{align*}
I
=
\int_{D} \sigma r^2 \,dS
=
\frac{M}{\,\pi R^2\,}\int_{D} r^2 \,dS
\end{align*}
%
が成り立つ。
図のように,
半径 $r$,
幅 $dr$ のドーナッツ状の領域の面積を $dS$ とすれば,
%
\begin{align*}
dS=2\pi r\,dr
\end{align*}
%
となる。
したがって,
円盤の中心軸まわりの慣性モーメントIは,
%
\begin{align*}
I
&=
\frac{M}{\,\pi R^2\,}\int_{D} r^2 \,dS
\\
&=
\frac{M}{\,\pi R^2\,}
\int_{0}^{R} r^2\cdot 2\pi r\,dr
\\
&=
\frac{2M}{\,R^2\,}\cdot \frac{R^4}{4}
\\
&=
\frac{MR^2}{2}
\end{align*}
%
となる。
%
\item[(2)]
円盤の中心に加わる重力の斜面方向の成分を $F_1$ とすれば
%
\begin{align*}
F_1=Mg \sin{\theta}
\end{align*}
%
である。
さらに,
摩擦力を $F_2=f$ とすれば
関する運動方程式 $\vt{F}=m\vt{a}$ は,
%
\begin{align*}
Mg \sin{\theta}-f=M\frac{d^2 x}{dt^2}
\quad \cdots \cdots (1)
\end{align*}
%
となる。
また,
円盤の回転角を $\varphi(t)$ とすれば,
$x(t)=R\varphi(t)$ である。
円盤の中心に関する回転モーメントは $N=Rf$ であるから,
円盤の回転に関する運動方程式 $N=I\frac{d^2\varphi}{dt^2}$ は,
%
\begin{align*}
Rf=I\frac{d^2 \varphi}{dt^2}
\end{align*}
%
となる。
すべりがない場合,
$x(t)=R\varphi(t)$ であるから,
円盤の慣性モーメント $I=\frac{MR^2}{2}$ を用いると, が
%
\begin{align*}
f
=
\frac{I}{R^2}\frac{dx^2}{dt^2}
=
\frac{M}{2}\frac{dx^2}{dt^2}
\end{align*}
%
となる。
これを,
式(1)に代入すれば
%
\begin{align*}
Mg\sin{\theta}-\frac{M}{2}\frac{dx^2}{dt^2}
=
M\frac{dx^2}{dt^2}
\end{align*}
%
となり,
これを整理して,
$x$ に関する微分方程式
%
\begin{align*}
\frac{d^2x}{dt^2}=\frac{2g\sin{\theta}}{3}
\end{align*}
%
が得られる。
これを積分すると
%
\begin{align*}
\frac{dx}{dt}=\frac{2g\sin{\theta}}{3}t+C
\end{align*}
%
となる。
右辺の $C$ は積分定数であるが,
$t=0$ で速度 $v0=0$ の条件から $C=0$ である。
さらに,
時間に関してもう1回積分すると,
%
\begin{align*}
x(t)=\frac{g\sin{\theta}}{\,3t^2\,}+C'
\end{align*}
%
となる。
右辺の $C'$ は積分定数であるが,
$t=0$ で位置 $x_0=0$ の条件から,
$C'=0$ である。
よって,
時刻 $t$ における円盤の位置 $x$ を表す式は,
次のようになる。
%
\begin{align*}
x(t)=\frac{g\sin{\theta}}{\,3t^2\,}
\end{align*}
%
\end{enumerate}