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例題集 / 化学 / 反応工学 / 管型反応器の2次反応
管型反応器の物質収支式の導出
知識・記憶レベル
難易度: ★
管型反応器における反応物Aのモル流量を$F_{A}$、
反応率を$x_{A}$、そして反応速度を$r_{A}$とする.
反応器の入り口から反応器体積で$V\rm m^3$ 離れた箇所にある
円盤状の薄片(体積 $\Delta V \rm m^3$) について、
定常状態では
$$(流入量)=(流出量)+(反応量)$$
が成り立っている。
このとき、微小部分$\Delta V$における物質収支式は
$$\frac{dV}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}$$
と表されることを導け。
ただし、$F_{A0}$は初期値とする。
%=image:/media/2014/09/19/141112554666599900.jpg:
解答例・解説
\noindent{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item 管型反応器では、各場所では時間的に濃度は変化しないので
定常状態である。
\item
モル流量$F_{A}$は、反応器体積$V$の関数とみれる。
\item
$F_{A}(V)$に関して、1次近似式
$\displaystyle F_{A}(V+\varDelta V)\doteqdot F_{A}(V)+\frac{dF_{A}}{dV}\varDelta V$
が成り立つ。
\item
Aの反応率$x_{A}$は、$\displaystyle x_{A}=\frac{F_{A 0}-F_{A}}{F_{A 0}}$により
定義される。
\end{enumerate}
\noindent
{\bf 解答}
微小部分$\varDelta V$では$(流入量)=(流出量)+(反応量)$である。
流入量は$F_{A}(V)$、流出量は$F_{A}(V+\varDelta V)$、
そして反応量は$(-r_{A})\varDelta V$であり、$F_{A}$の1次近似式
\[F_{A}(V+\varDelta V)\doteqdot F_{A}(V)+\frac{dF_{A}}{dV}\varDelta V\]
を利用すると、微小部分では
\[
F_{A}(V)=\left\{F_{A}(V)+\frac{dF_{A}}{dV}\varDelta V\right\}
+(-r_{A})\varDelta V
\]
が成り立つ.したがって、
\begin{equation}
\frac{dF_{A}}{dV}=r_{A}
\end{equation}
である.ここで、反応率$x_{A}$の定義から
$$x_{A}=\frac{F_{A 0}-F_{A}}{F_{A 0}}
\qquad よって\qquad
F_{A}=F_{A 0}(1-x_{A})$$
であるから、
$$\frac{dF_{A}}{dV}=-F_{A 0}\frac{dx_{A}}{dV}$$
である。したがって、
\begin{align*}
-F_{A 0}\frac{dx_{A}}{dV}=r_{A}
\qquad すなわち\qquad
\frac{dV}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}
\end{align*}
が得られる。
管型反応器の設計方程式の導出
知識・記憶レベル
難易度: ★
管型反応器における反応物{A}のモル流量を$F_{A}$、モル濃度を$C_{A}$、
反応率を$x_{A}$、そして反応速度を$r_{A}$とする.
反応器の入り口から反応器体積で$V\rm m^3$ 離れた箇所にある
円盤状の薄片(体積 $\varDelta V \rm m^3$) について、
定常状態での物質収支式は、$F_{A0}$は初期値として
\[\frac{dV}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\]
と表される。
原料液を体積流量 $v_0$ の速度で管型反応器に送液すると、設計方程式は
\begin{equation*}
\frac{V}{v_0}=C_{A 0}\int_{0}^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}
\end{equation*}
と表されることを導け。
%=image:/media/2014/09/19/141112689814671100.jpg:
解答例・解説
\noindent {\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item
置換積分の公式
$\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}F(x(t))\cdot\frac{dx}{dt}\cdot dt
=\int_{a}^{b}F(x)\,dx$
$(x(\alpha)=a,\,x(\beta)=b)$
\item
流量速度が$v_0$、モル濃度$C_{A}$のとき、
モル流量$F_{A}$は、$F_{A}=v_0C_{A}$である。
\end{enumerate}
{\bf 解答}
物質収支式が
\[\frac{dV}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\]
であるから、
\[\frac1{F_{A 0}}\cdot dV
=\frac1{-r_{A}}\cdot \frac{dx_{A}}{dV}\cdot dV\]
である。両辺を$V$で積分すると、置換積分の公式より
\[\frac1{F_{A 0}}\int_{0}^{V}\,dV
=\int_{0}^{V}\frac1{-r_{A}}\cdot \frac{dx_{A}}{dV}\cdot dV
=\int_{0}^{x_{A}}\frac1{-r_{A}}\cdot dx_{A}\]
である。したがって、
\[\frac{V}{F_{A 0}}=\int_{0}^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\]
が成り立つ。
流量速度$v_0$は単位時間当たりに流れる液体の体積であり、
$F_{A 0}=v_0 C_{A 0}$であるから、
\[
\frac{V}{v_0}=C_{A 0}\int_{0}^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}
\]
となる.これが、求める設計方程式である.
管型反応器における反応器と反応速度
知識・記憶レベル
難易度: ★
管型反応器における、A $+$ 2B $\to$ P で示される液相反応について、
A, Bのモル濃度をそれぞれ$C_{A}$, $C_{B}$とし、
その初期値をそれぞれ$C_{A 0},\,C_{B 0}$とする。
Aの反応速度が、$k$を反応速度定数として $$r_{A}=-kC_{A}C_{B}$$ と表されるとき、
$r_{A}$をAの反応率$x_{A}$を用いた式で表せ。
解答例・解説
{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item (1) 初期値である$C_{A 0}, C_{B 0}$は定数である。
\item (2) A, Bのモル濃度$C_{A}, C_{B}$は、
反応時間$t$の経過につれ減少する関数である。
\item (3) Aの反応率$x_{A}$は、$\displaystyle x_{A}(t)=\frac{C_{A 0}-C_{A}(t)}{C_{A 0}}$
により定義される。
\item (4) 与えられた反応式では、Aが1mol 反応すると、Bは2mol反応する。
\end{enumerate}
{\bf 解答}
Aの反応率の定義から
\[x_{A}(t)=\frac{C_{A 0}-C_{A}(t)}{C_{A 0}}
\qquad したがって\qquad
C_{A}(t)=C_{A 0}(1-x_{A}(t))
\]
である.また、与えられた反応式より、
Aが 1mol 反応するとBは 2mol 反応するので、
\[C_{B}(t)=C_{B 0}-2C_{A 0}x_{A}(t)
=C_{A 0}\left(\frac{C_{B 0}}{C_{A 0}}-2x_{A}(t)\right)
\]
である.したがって、反応速度$r_{A}$は反応率$x_{A}$を用いて
\[r_{A}=-kC_{A}C_{B}
=-kC_{A 0}^2(1-x_{A})\left(\frac{C_{B 0}}{C_{A 0}}-2x_{A}\right)\]
と表される.
管型反応器の2次反応による反応率と反応器体積
知識・記憶レベル
難易度: ★
管型反応器において A $+$ 2B $\to$ P で示される液相反応の反応速度が
$$r_{A}=-kC_{A}C_{B}$$ で表され、
反応速度定数が $k=4.00× 10^{-5} \rm m^3/(\rm mol\cdot \rm min)$
と表されるものとする.このとき、
初濃度 $C_{A0}=3.00× 10^3\, \rm mol/\rm m^3$、
$C_{B0}=15.0×10^3 \rm mol/\rm m^3$
の原料液を流量 $v_0=5.00× 10^{-2} \rm m^3/\rm min$ の速度で
管型反応器に送液するとき、
Aの反応率$75%$を達成するために必要な
反応器体積$V_{P}$を求めよ.
解答例・解説
{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item
(1) 微小部分における物質収支式は、
$\displaystyle \frac{dV_{P}}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}$である。
\item
(2) 物質収支式を反応器全体で積分することにより、
設計方程式は
\[
\frac{V_P}{v_0}=C_{A_0}\int_{0}^{x_A}\frac{dx_A}{-r_A}
\]
である。
\item
(3) 反応速度$r_{A}$と反応率$x_{A}$の間には、
\[r_{A}=-kC_{A}C_{B}
=-kC_{A 0}^2(1-x_{A})\left(\frac{C_{B 0}}{C_{A 0}}-2x_{A}\right)\]
という関係がある。
\end{enumerate}
{\bf 解答}
管型反応器全体の設計方程式は
\begin{eqnarray}
V_{P}
&=&v_0C_{A 0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\nonumber\\
&=&v_{0}C_{A_0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{kC_{A_0}^2(1-x_A)
\left(\frac{C_{B_0}}{C_{A_0}}-2x_{A}\right)}\nonumber\\
&=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A)
\left(\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}-x_{A}\right)}\nonumber
\end{eqnarray}
である.与えられた条件から、
\[\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}=\frac{15.0\times 10^3}{2\times 3\times 10^3}
=2.5\]
であるので、反応器体積は
\[V_{P}
=\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A)(2.5-x_{A})}
\]
を計算すればよい.
上式の右辺を部分分数に分解して積分する$^{(注1)}$.
$x_{A}$は反応率であるから$0<x_{A}<1$であることに注意すると、
\begin{eqnarray*}
V_{P}
&=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}
\frac1{1.5}\left(\frac1{1-x_{A}}-\frac1{2.5-x_{A}}\right)\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\bigg[-\ln(1-x_{A})
+\ln(2.5-x_{A})\bigg]_0^{x_{A}}\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\left\{\ln\left(\frac{2.5-x_{A}}{1-x_{A}}\right)-\ln(2.5)\right)
\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{eqnarray*}
である.
与えられた値を代入することにより、
$V_{P}$は次の式で表される.
\begin{equation}
V_{P}=1.39\times 10^{-1}\times\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{equation}
したがって、$x_{A}=0.75$のときの反応器体積は、
\[
V_{P}
=1.39\times 10^{-1}\times
\ln\left\{\frac{2.5-0.75}{2.5(1-0.75)}\right\}=0.143\,\rm m^3
\]
である。
\noindent
{\bf 【注1】}
式(4)の被積分関数を部分分数に分解するには、下記の手順による.
\[
\frac1{(1-x_{A})(2.5-x_{A})}=
\frac{a}{1-x_{A}}+\frac{b}{2.5-x_{A}}
\]
とおいて分母を払うと、
\[1=a(2.5-x_{A})+b(1-x_{A})\]
となる.
ここで、右辺の各項を0にする値を$x_{A}$に代入する.
\begin{align*}
&x_{A}=1 を代入すると 1=1.5a したがって a=\frac1{1.5}\\
&x_{A}=2.5 を代入すると 1=-1.5b したがって b=-\frac1{1.5}\end{align*}
が得られる。
これを、{\bf 数値代入法}という.
あるいは、$x_{A}$について整理すると
\[1=(2.5a+b)-(a+b)x_{A}\]
となるので、両辺の係数を比較することにより連立方程式
\[2.5a+b=1, a+b=0\]
が得られる.これを解くことでも求められる.
この求め方を{\bf 係数比較法}という.
分母が1次式の積に因数分解できるときは、
数値代入法による方が簡単である.
管型反応器の2次反応による反応器体積と反応率
知識・記憶レベル
難易度: ★★
管型反応器の液相反応 A $+$ 2B $\longrightarrow$ P において、
反応器体積$V_{P}$が反応率$x_{A}$を用いて
\begin{equation}
V_{P}
=1.39\times 10^{-1}\times\ln
\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{equation}
と表されるものとする。
反応器体積が$V_{P}=0.20$となるときの反応率$x_{A}$を求めよ。
解答例・解説
{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item
(1) 対数と指数の関係より、$r=\ln M$ のとき、$M=\exp(r)$である。
\item
(2) 反応率$x_{A}$より反応器体積を求めるには、
式(6)を$x_{A}$について解けばよい.
\item
(3) $\displaystyle a=\frac{2.5-x}{2.5(1-x)}$を$x$について解くには、
分母を払った式$2.5(1-x)a=2.5-x$を$x$について整理すれば良い。
\end{enumerate}
{\bf 解答}
\begin{align*}
V_{P}=1.39\times 10^{-1}\times\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{align*}
であるから、
\begin{align*}
\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
=\frac{V_{P}}{1.39\times 10^{-1}}=7.20\,V_{P}
\end{align*}
である.与えられた条件から$V_{P}=0.20$であるので、
\begin{align*}
\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
=7.20\times 0.20=1.44
\end{align*}
となる.これを指数の式に直すと、
\begin{align*}
\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}=e^{1.44} したがって
2.5-x_{A}=2.5\times\, e^{1.44}(1-x_{A})
\end{align*}
となる.$x_{A}$について整理すると
\begin{align*}
\left(2.5 e^{1.44}-1\right)x_{A}=2.5\left(e^{1.44}-1\right)
\end{align*}
となるので、求める反応率は次のようになる.
\begin{equation*}
x_{A}=\frac{2.5 e^{1.44}-1}{2.5 e^{1.44}-1}
=\frac{2.5(1-e^{-1.44})}{2.5-e^{-1.44}}
=0.843
\end{equation*}