多段CSTRの$i$段目の物質収支式は
\begin{equation*}
\frac{dC_{A,\,i}}{d\theta}+NC_{A,\,i}=NC_{A,\,i-1}
\end{equation*}
と表される。
多段CSTRに供給される物質の入り口濃度$C_{A,\,0}$で割って
濃度を無次元化し、
$Y_{A,\,i}(\theta)=C_{A,\,i}(\theta)/C_{A,\,0}$とおくと、
次式が得られる。
\begin{equation}
\frac{dY_{A,\,i}}{d\theta}+NY_{A,\,i}=NY_{A,\,i-1}
\end{equation}
この微分方程式をラプラス変換することにより、
インパルス応答を表す式を導出せよ。
解答例・解説
{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item
(1) 初期条件は、
$Y_{A,\,i}(0)=0~(i\ge 1)$であり、$i=0$のときは
$Y_{A,\,0}(\theta)=\delta(\theta)$である。
\item
(2) ${\cal L}\left\{Y_{A,\,i}(\theta)\right\}=Y_{A,\,i}(s)$とおくと、
ラプラス変換の公式より、次のことが成り立つ。
\[{\cal L}\left\{\frac{dY_{A,\,i}}{d\theta}\right\}
=sY_{A,\,i}(s)-Y_{A,\,i}(0)=sY_{A,\,i}(s)\]
\item
(3) ラプラス逆変換の公式より、次のことが成り立つ。
\[{\cal L}^{-1}\left\{\frac1{s+\alpha}\right\}=\exp(-\alpha t),\quad
{\cal L}^{-1}\left\{\frac1{(s+\alpha)^n}\right\}
=\frac{t^{n-1}}{(n-1)!}\exp(-\alpha t)\]
\end{enumerate}
{\bf 解答}
与えられた微分方程式を
ラプラス変換すると、
\begin{align*}
{\cal L}\left\{\frac{dY_{A,\,i}}{d\theta}+NY_{A,\,i}\right\}
=N{\cal L}\left\{Y_{A,\,i-1}\right\}\\
sY_{A,\,i}(s)+NY_{A,\,i}(s)=NY_{A,\,i-1}(s)\\
(s+N)Y_{A,\,i}(s)=NY_{A,\,i-1}(s)\\
\therefore Y_{A,\,i}(s)=\frac{N}{s+N}Y_{A,\,i-1}(s)
\end{align*}
となる。したがって、$i=N$のとき
\begin{align*}
Y_{A,\,N}(s)
&=\frac{N}{s+N}Y_{A,\,N-1}(s)\\
&=\frac{N}{s+N}\cdot\frac{N}{s+N}Y_{A,\,N-2}(s)
=\frac{N^2}{(s+N)^2}Y_{A,\,N-2}(s)\\
& (以下、同様のことを繰り返す)\\
&=\frac{N^N}{(s+N)^N}Y_{A,\,0}(s)
\end{align*}
となる。インパルス入力$Y_{A,\,0}(\theta)=\delta(\theta)$の
ラプラス変換は$1$であるから、$Y_{A,\,0}(s)=1$である。
したがって、
\begin{equation*}
Y_{A,\,N}(s)=\frac{N^N}{(s+N)^N}
\end{equation*}
である。
この式を逆ラプラス変換することにより、
\begin{align*}
Y_{A,\,N}(\theta)
&={\cal L}^{-1}\left\{Y_{A,\,N}(s)\right\}\\
&={\cal L}^{-1}\left\{\frac{N^N}{(s+N)^N}\right\}\\
&=N^N{\cal L}^{-1}\left\{\frac{1}{(s+N)^N}\right\}\\
&=N^N\frac{\theta^{N-1}}{(N-1)!}\exp(-N\theta)\\
&=N\exp(-N\theta)\frac{(N\theta)^{N-1}}{(N-1)!}
\end{align*}
となる。
\noindent
【注意】
この式は、ステップ応答の滞留時間分布関数$E(\theta)$と一致する。