検定
%
母集団のある母数を $\theta$ とする。
$\theta$ を値 $\theta_0$ と比較したとき,
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$\theta$ は $\theta_0$ ではない。
\item[$\bullet$]
$\theta$ は $\theta_0$ より大きい。
\item[$\bullet$]
$\theta$ は $\theta_0$ より小さい。
\end{enumerate}
%
のいずれかが正しいかどうかを判断することを,
\ommindex{仮説}{かせつ}の\ommindex{検定}{けんてい}という。
仮説の検定は次の手順で行う。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
「$
\theta=\theta_0$ である」という仮説を立てる。
これを\ommindex{帰無仮説}{きむかせつ}といい,
$\textrm{H}_0$ と表す。
\item[(2)]
状況に応じて「$\theta\ne \theta_0$ である」,
「$\theta> \theta_0$ である」,
「$\theta< \theta_0$ である」という,
帰無仮説を否定する仮説を立てる。
これを\ommindex{対立仮説}{たいりつかせつ}といい,
$\textrm{H}_1$ と表す。
このとき,
帰無仮説と対立仮説は必ずどちらかの状況が起こるようにする。
たとえば,
対立仮説を「$\textrm{H}_1\,:\,\theta> \theta_0$ である」
とするのは,
周辺の状況から「$\theta<\theta_0$ ということは起こりえない
ことが分かっている場合である。
\item[(3)]
$\theta=\theta_0$ と仮定したとき,
分布が分かっている適切な統計量を選ぶ。
標本を無作為抽出したとき,
その統計量の実現値がとりえない範囲
(その範囲の値をとる確率が非常に小さい範囲)を定める。
この範囲を\ommindex{棄却域}{ききゃくいき}という。
このとき,
``確率が $\alpha$ 以下であれば確率が小さいものとする''
と定めるとき,
$\alpha$ を\ommindex{有意水準}{ゆういすいじゅん}
または\ommindex{危険率}{きけんりつ}という。
\item[(4)]
実際に標本を抽出し,
先に定めておいた統計量の実現値 $a$ を調べる。
(4-1) $a$ が棄却域に含まれる値であった場合には,
$\theta=\theta_0$ という仮定が正しくなかったと判断し,
対立仮説 H$_1$ が正しいと結論できる。
このとき,
帰無仮説を\ommindex{棄却}{ききゃく}するという。
(4-2) $a$ が棄却域に含まない値であった場合には,
帰無仮説を棄却できず,
$\theta=\theta_0$ は正しくないとは判断できない,
という結論となる。
\end{enumerate}
%
仮説の検定をするとき,
次の2種類の誤りが起こりうる。
%
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
H$_0$ が正しいにも関わらず,
H$_0$ を棄却してしまう誤り。
これを\ommindex{第1種の誤り}{だいいっしゅのあやまり}という。
有意水準(または危険率)は第1種の誤りがおこる確率である。
\item[$\bullet$]
H$_0$ が誤っているにも関わらず,
H$_0$ を棄却できない誤り。
これを\ommindex{第2種の誤り}{だいにしゅのあやまり}という。
\end{enumerate}
%
棄却域は,
帰無仮説 H$_0$ に対する対立仮説 H$_1$ がどのようなものかによって,
次のように設定する。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
対立仮説が H$_1\,:\,\theta\ne \theta_1$ である場合
\\
棄却域を $\theta$ の分布の両側に設ける。
これを\ommindex{両側検定}{りょうがわけんてい}という。
\item[(2)]
対立仮説が H$_1\,:\,\theta> \theta_1$ である場合
\\
棄却域を $\theta$ の分布の右側に設ける。
これを\ommindex{右側検定}{みぎがわけんてい}という。
\item[(3)]
対立仮説が H$_1\,:\,\theta< \theta_1$ である場合
\\
棄却域を $\theta$ の分布の左側に設ける。
これを\ommindex{左側検定}{ひだりがわけんてい}という。
\end{enumerate}
%
右側検定と左側検定を併せて,
\ommindex{片側検定}{かたがわけんてい}という。
いずれの場合も,
帰無仮説 H$_0$ を棄却しやすいように設定される。
%
母比率の検定
%
正規母集団から抽出した大きさ $n$ の標本の標本平均を $\overline{X}$,
不偏分散 を $U$ とする。
このとき,
母平均 $\mu$ に関する帰無仮説「H$_0\,:\,\mu=\mu_0$」についての検定は
次のことを用いて行う。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
母分散 $\sigma^2$ が分かっているとき。
\\
標本平均 $\overline{X}$ は,
正規分布 $N\left(\mu,\frac{\sigma^2}{n}\right)$ にしたがう。
したがって,
帰無仮説 H$_0\,:\,\mu=\mu_0$ が正しいと仮定すれば,
%
\begin{align*}
Z=\frac{\overline{X}-\mu_0}{\sigma/\sqrt{n}}
\end{align*}
%
は
標準正規分布 $N(0,1)$ にしたがう。
標準正規分布 $N(0,1)$ を用いた検定を
\ommindex{$\boldsymbol{Z}$検定}{ぜっとけんてい}という。
\item[(2)]
母分散 $\sigma^2$ が分かっていないとき。
\\
$\sigma^2$ を不偏分散の実現値 $u^2$ で代用したとき,
帰無仮説 H$_0\,:\,\mu=\mu_0$ が正しいと仮定すれば,
%
\begin{align*}
T=\frac{\overline{X}-\mu_0}{u/\sqrt{n}}
\end{align*}
%
は
自由度 $n-1$ の $t$ 分布にしたがう。
$t$ 分布を用いた検定を
\ommindex{$\boldsymbol{t}$検定}{ぜっとけんてい}という。
\end{enumerate}
%
%
母分散の検定
%
正規母集団から抽出した大きさ $n$ の標本の標本分散を $S^2$ と
する。
このとき,
母分散 $\sigma^2$ に関する
帰無仮説「H$_0\,:\,\sigma^2=\sigma^2_0$」についての検定は
次のことを用いて行う。
%
\begin{enumerate}
\item[$\bullet$]
$\sigma^2=\sigma^2_0$ が正しいと仮定すれば,
%
%
\begin{align*}
\chi^2=\frac{nS^2}{\sigma_0^2}
\end{align*}
%
は自由度 $n-1$ の $\chi^2$ 分布にしたがう。
\end{enumerate}
%
$\chi^2$ 分布 を用いた検定を
\ommindex{$\boldsymbol{\chi}^2$検定}{かいじじょうけんてい}という。
%