複素積分
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$x(t)$, $y(t)$ が連続であるとき,
複素平面上の点
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\begin{align*}
z(t)=x(t)+i\,y(t)
\quad (\alpha\le t\le \beta)
\end{align*}
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は複素平面上に曲線 C を描く。
この曲線 C を $z=z(t)$ と表す。
$\alpha\le t\le \beta$ を曲線 C の\ommindex{定義域}{ていぎいき}という。
このとき,
$z(\alpha)$ を\ommindex{始点}{してん},
$z(\beta)$ を\ommindex{終点}{しゅうてん}といい,
$t$ の増加に伴って点 $z(t)$ が移動する向きを曲線 C の
\ommindex{向き}{むき}という。
また,
曲線 C と逆向きの曲線を $-{\text{C}}$ と表す。
$x(t)$, $y(t)$ が微分可能であるとき,
連続な複素関数 $f(z)$ に対して,
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\begin{align*}
\int_{\text{C}}f(z)\,dz
=
\int_{\alpha}^{\beta}f(z(t))\frac{dz}{dt}\,dt
\end{align*}
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を,
曲線 ${\text{C}}:z(t)=x(t)+i\,y(t)$ に沿う $f(z)$ の
\ommindex{複素積分}{ふくそせきぶん}という。
複素積分に対して,
実関数の積分を\ommindex{実積分}{じつせきぶん}という。
以下,
複素積分を単に積分という。
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コーシーの積分定理
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終点と始点が一致する曲線を\ommindex{閉曲線}{へいきょくせん}という。
また,
それ自身と交差しない閉曲線を
\ommindex{単一閉曲線}{たんいつへいきょくせん}という。
単一閉曲線が,
その内部を左手に見て進むとき,
単一閉曲線は\ommindex{正の向き}{せいのむき}ともつという。
以下,
単一閉曲線 C は常に正の向きをもつとする。
複素関数 $f(z)$ が単一閉曲線 C およびその内部を含む領域で正則であるとき,
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\begin{align*}
\int_{\text{C}}f(z)\,dz=0
\end{align*}
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が成り立つ。
これを\ommindex{コーシーの積分定理}{こーしーのせきぶんていり}という。
単一閉曲線 C の内部に,
互いに外部にある単一閉曲線 ${\text{C}}_1$,
${\text{C}}_2$, \ldots , ${\text{C}}_n$ があるとする。
このとき,
$f(z)$ が,
C の内部で ${\text{C}}_1$,
${\text{C}}_2$, \ldots , ${\text{C}}_n$ の外部である領域 D,
およびその境界線上で正則であるとき,
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\begin{align*}
\int_{\text{C}}f(z)\,dz
=
\sum_{k=1}^{n}\int_{\text{C}_k}f(z)\,dz
\end{align*}
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が成り立つ。
この定理はコーシーの積分定理によって導かれる。
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コーシーの積分表示
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曲線 C を単一閉曲線とする。
関数 $f(z)$ が C およびその内部を含む領域で正則であるとき,
C の内部の任意の点 $a$ に対して,
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\begin{align*}
f(a)=\frac{1}{2\pi i}\int_{\text{C}}\frac{f(z)}{z-a}\,dz
\end{align*}
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が成り立つ。
これを\ommindex{コーシーの積分表示}{こーしーのせきぶんひょうじ}という。
関数 $f(z)$ が領域 D で正則であるとき,
$f(z)$ は D で何回でも微分可能である。
さらに,
単一閉曲線 {\text{C}} その内部を含む領域で正則であるとき,
{\text{C}} の内部の任意の点 $a$ に対して
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\begin{align*}
f^{(n)}(a)
=\frac{n!}{2\pi i}\int_{\text{C}}\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}\,dz
\quad
(n=0,1,2,\cdots)
\end{align*}
が成り立つ。
これを\ommindex{グルサの公式}{ぐるさのこうしき}という。
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