基本変形
%
行列に対する次の変形を
\ommindex{行の基本変形}{ぎょうのきほんへんけい}という。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
2 つの行を入れ替える。
\item[(2)]
1 つの行を $k$ 倍する。
ただし $k\ne 0$ とする。
\item[(3)]
ある行に他の行の $t$ 倍を加える。
\end{enumerate}
%
また,
次の変形を\ommindex{列の基本変形}{れつのきほんへんけい}という。
%
\begin{enumerate}
\item[(1)]
2 つの列を入れ替える。
\item[(2)]
1 つの列を $k$ 倍する。
ただし $k\ne 0$ とする。
\item[(3)]
ある列に他の列の $t$ 倍を加える。
\end{enumerate}
%
基本行列
%
単位行列に1回だけ基本変形を施して得られる行列を
\ommindex{基本行列}{きほんぎょうれつ}という。
%
3 次の基本行列には次のようなものである。
%
\begin{eqnarray*}
F_1
&=
\left(\begin{array}{ccc}
0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1
\end{array}\right)
\\
F_2
&=
\left(\begin{array}{ccc}
1 & 0 & 0 \\ 0 & k & 0 \\ 0 & 0 & 1
\end{array}\right)
\\
F_3
&=
\left(\begin{array}{ccc}
1 & 0 & 0 \\ t & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1
\end{array}\right)
\end{eqnarray*}
%
すべての行列は,
何回かの基本変形を行って,
次のような形に変形することができる。
ただし,
$E_r$ は $r$ 次単位行列,
$O_{k,l}$ は $k\times l$ 型零行列である。
行列を区切る線は,
見やすくするために便宜上入れたものであり,
意味はない。
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\begin{align*}
\left(\begin{array}{c|c}
E_r & O_{r,n-r}
\\ \hline
O_{m-r,r} & O_{m-r,n-r}
\end{array}\right)
=
\left(\begin{array}{cccc|ccc}
1 & 0 & \cdots & 0 & 0 & \cdots & 0
\\
0 & 1 & \cdots & 0 & 0 & \cdots & 0
\\
\vdots & \vdots & \ddots & 0 & 0 & \cdots & 0
\\
0 & 0 & \cdots & 1 & 0 & \cdots & 0
\\ \hline
0 & 0 & \cdots & 0 & 0 & \cdots & 0
\\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots
\\
0 & 0 & \cdots & 0 & 0 & \cdots & 0
\end{array}
\right)
\end{align*}
%
基本変形と基本行列
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基本変形と基本行列の間には次の関係がある。
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\begin{enumerate}
\item[(1)]
行列 $A$ に1回だけ行の基本変形を施して $B$ となるとき,
%
\begin{align*}
FA=B
\end{align*}
%
となる基本行列 $F$ がある。
\item[(2)]
また,
行列 $A$ に1回だけ列の基本変形を施して $B$ となるとき,
%
\begin{align*}
AF=B
\end{align*}
%
となる基本行列 $F$ がある。
\end{enumerate}
%
基本行列は正則であり,
正方行列の正則性は基本変形によって変化しない。
すなわち,
次が成り立つ。
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\begin{align*}
\mbox{$A$ は正則} \iff \mbox{$A$ は単位行列に基本変形できる}
\end{align*}
%