例題集

多段CTSRのモル濃度の満たす微分方程式の導出

知識・記憶レベル   難易度: ★★
多段CSTR(多段連続槽型反応器、下図参照)に初めに水を満たした状態から、 ある時間に1段目の入り口から$C_{A,\,0}$のモル濃度を持つ溶液を 体積流量$v_0$で連続的に供給させる.この操作はステップ入力と呼ばれる. この操作を行うことによる各槽のモル濃度を、それぞれ $C_{A,\,1},\,C_{A,\,2},\,\ldots$とする. ただし、この操作は定常的操作とし、 各槽の反応器体積$V$は同一であるものとする. また、槽内は完全混合で成分濃度は均一、 反応器内と出口の成分濃度も同一とする.  このとき、 $i-1$段目と$i$段目の物質収支を考えることにより、 $i$段目のモル濃度は次の微分方程式を満たすことを示せ. \[V\frac{dC_{A,\,i}}{dt}=v_0C_{A,\,i-1}-v_0C_{A,\,i}\] %=image:/media/2014/09/19/141112580638561000.jpg:
{\bf 方針} \begin{enumerate} \item (1) $i$段目に蓄積するモル数の変化は、$i-1$段目からの流入量$v_0\cdot C_{A,\,i-1}$と、 $i$段目からの流出量$v_0\cdot C_{A,\,i}$との差である。 \item (2) 体積流量$v_0$で供給されているので、 $i$段目に流入するのは$v_0C_{A,\,i-1}$である。 \end{enumerate} {\bf 解答} $(蓄積)=(流入)-(流出)$であることを元に、 $i$段目のタンクの物質収支式を考える. $i$段目のタンクには、$i-1$段目のタンクよりモル濃度$C_{A,\,i-1}$の 溶液が体積流量$v_0$で流入する.したがって、流入量は$v_0C_{A,\,i-1}$である.  一方、$i$段目のタンクからはモル濃度$C_{A,\,i}$の溶液が 体積流量$v_0$で流出するので、流出量は$v_0C_{A,\,i}$である. その差が$i$段目のタンクに蓄積することになるが、 $i$段目のタンクの濃度変化は$\displaystyle \frac{dC_{A,\,i}}{dt}$であるので、 その槽への蓄積量は反応体積$V$を乗じることで得られる.  以上のことは、次の微分方程式で表される. \begin{equation*} V\frac{dC_{A, i}}{dt}=v_0C_{A, i-1}-v_0C_{A, i} \end{equation*}