{\bf 方針}
\begin{enumerate}
\item
(1) 微小部分における物質収支式は、
$\displaystyle \frac{dV_{P}}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}$である。
\item
(2) 物質収支式を反応器全体で積分することにより、
設計方程式は
\[
\frac{V_P}{v_0}=C_{A_0}\int_{0}^{x_A}\frac{dx_A}{-r_A}
\]
である。
\item
(3) 反応速度$r_{A}$と反応率$x_{A}$の間には、
\[r_{A}=-kC_{A}C_{B}
=-kC_{A 0}^2(1-x_{A})\left(\frac{C_{B 0}}{C_{A 0}}-2x_{A}\right)\]
という関係がある。
\end{enumerate}
{\bf 解答}
管型反応器全体の設計方程式は
\begin{eqnarray}
V_{P}
&=&v_0C_{A 0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\nonumber\\
&=&v_{0}C_{A_0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{kC_{A_0}^2(1-x_A)
\left(\frac{C_{B_0}}{C_{A_0}}-2x_{A}\right)}\nonumber\\
&=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A)
\left(\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}-x_{A}\right)}\nonumber
\end{eqnarray}
である.与えられた条件から、
\[\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}=\frac{15.0\times 10^3}{2\times 3\times 10^3}
=2.5\]
であるので、反応器体積は
\[V_{P}
=\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A)(2.5-x_{A})}
\]
を計算すればよい.
上式の右辺を部分分数に分解して積分する$^{(注1)}$.
$x_{A}$は反応率であるから$0<x_{A}<1$であることに注意すると、
\begin{eqnarray*}
V_{P}
&=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}}
\int_0^{x_{A}}
\frac1{1.5}\left(\frac1{1-x_{A}}-\frac1{2.5-x_{A}}\right)\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\bigg[-\ln(1-x_{A})
+\ln(2.5-x_{A})\bigg]_0^{x_{A}}\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\left\{\ln\left(\frac{2.5-x_{A}}{1-x_{A}}\right)-\ln(2.5)\right)
\\
&=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}}
\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{eqnarray*}
である.
与えられた値を代入することにより、
$V_{P}$は次の式で表される.
\begin{equation}
V_{P}=1.39\times 10^{-1}\times\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\}
\end{equation}
したがって、$x_{A}=0.75$のときの反応器体積は、
\[
V_{P}
=1.39\times 10^{-1}\times
\ln\left\{\frac{2.5-0.75}{2.5(1-0.75)}\right\}=0.143\,\rm m^3
\]
である。
\noindent
{\bf 【注1】}
式(4)の被積分関数を部分分数に分解するには、下記の手順による.
\[
\frac1{(1-x_{A})(2.5-x_{A})}=
\frac{a}{1-x_{A}}+\frac{b}{2.5-x_{A}}
\]
とおいて分母を払うと、
\[1=a(2.5-x_{A})+b(1-x_{A})\]
となる.
ここで、右辺の各項を0にする値を$x_{A}$に代入する.
\begin{align*}
&x_{A}=1 を代入すると 1=1.5a したがって a=\frac1{1.5}\\
&x_{A}=2.5 を代入すると 1=-1.5b したがって b=-\frac1{1.5}\end{align*}
が得られる。
これを、{\bf 数値代入法}という.
あるいは、$x_{A}$について整理すると
\[1=(2.5a+b)-(a+b)x_{A}\]
となるので、両辺の係数を比較することにより連立方程式
\[2.5a+b=1, a+b=0\]
が得られる.これを解くことでも求められる.
この求め方を{\bf 係数比較法}という.
分母が1次式の積に因数分解できるときは、
数値代入法による方が簡単である.