例題集

管型反応器の2次反応による反応率と反応器体積

知識・記憶レベル   難易度:
管型反応器において A $+$ 2B $\to$ P で示される液相反応の反応速度が $$r_{A}=-kC_{A}C_{B}$$ で表され、 反応速度定数が $k=4.00× 10^{-5} \rm m^3/(\rm mol\cdot \rm min)$ と表されるものとする.このとき、 初濃度 $C_{A0}=3.00× 10^3\, \rm mol/\rm m^3$、 $C_{B0}=15.0×10^3 \rm mol/\rm m^3$ の原料液を流量 $v_0=5.00× 10^{-2} \rm m^3/\rm min$ の速度で 管型反応器に送液するとき、 Aの反応率$75%$を達成するために必要な 反応器体積$V_{P}$を求めよ.
{\bf 方針} \begin{enumerate} \item (1) 微小部分における物質収支式は、 $\displaystyle \frac{dV_{P}}{F_{A 0}}=\frac{dx_{A}}{-r_{A}}$である。 \item (2) 物質収支式を反応器全体で積分することにより、 設計方程式は \[ \frac{V_P}{v_0}=C_{A_0}\int_{0}^{x_A}\frac{dx_A}{-r_A} \] である。 \item (3) 反応速度$r_{A}$と反応率$x_{A}$の間には、 \[r_{A}=-kC_{A}C_{B} =-kC_{A 0}^2(1-x_{A})\left(\frac{C_{B 0}}{C_{A 0}}-2x_{A}\right)\] という関係がある。 \end{enumerate} {\bf 解答} 管型反応器全体の設計方程式は \begin{eqnarray} V_{P} &=&v_0C_{A 0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_{A}}{-r_{A}}\nonumber\\ &=&v_{0}C_{A_0}\int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{kC_{A_0}^2(1-x_A) \left(\frac{C_{B_0}}{C_{A_0}}-2x_{A}\right)}\nonumber\\ &=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}} \int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A) \left(\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}-x_{A}\right)}\nonumber \end{eqnarray} である.与えられた条件から、 \[\frac{C_{B_0}}{2C_{A_0}}=\frac{15.0\times 10^3}{2\times 3\times 10^3} =2.5\] であるので、反応器体積は \[V_{P} =\frac{v_0}{2kC_{A_0}} \int_0^{x_{A}}\frac{dx_A}{(1-x_A)(2.5-x_{A})} \] を計算すればよい. 上式の右辺を部分分数に分解して積分する$^{(注1)}$. $x_{A}$は反応率であるから$0<x_{A}<1$であることに注意すると、 \begin{eqnarray*} V_{P} &=&\frac{v_0}{2kC_{A_0}} \int_0^{x_{A}} \frac1{1.5}\left(\frac1{1-x_{A}}-\frac1{2.5-x_{A}}\right)\\ &=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}} \bigg[-\ln(1-x_{A}) +\ln(2.5-x_{A})\bigg]_0^{x_{A}}\\ &=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}} \left\{\ln\left(\frac{2.5-x_{A}}{1-x_{A}}\right)-\ln(2.5)\right) \\ &=&\frac{v_0}{3kC_{A 0}} \ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\} \end{eqnarray*} である. 与えられた値を代入することにより、 $V_{P}$は次の式で表される. \begin{equation} V_{P}=1.39\times 10^{-1}\times\ln\left\{\frac{2.5-x_{A}}{2.5(1-x_{A})}\right\} \end{equation} したがって、$x_{A}=0.75$のときの反応器体積は、 \[ V_{P} =1.39\times 10^{-1}\times \ln\left\{\frac{2.5-0.75}{2.5(1-0.75)}\right\}=0.143\,\rm m^3 \] である。 \noindent {\bf 【注1】}  式(4)の被積分関数を部分分数に分解するには、下記の手順による. \[ \frac1{(1-x_{A})(2.5-x_{A})}= \frac{a}{1-x_{A}}+\frac{b}{2.5-x_{A}} \] とおいて分母を払うと、 \[1=a(2.5-x_{A})+b(1-x_{A})\] となる. ここで、右辺の各項を0にする値を$x_{A}$に代入する. \begin{align*} &x_{A}=1  を代入すると  1=1.5a  したがって  a=\frac1{1.5}\\ &x_{A}=2.5  を代入すると  1=-1.5b  したがって  b=-\frac1{1.5}\end{align*} が得られる。 これを、{\bf 数値代入法}という. あるいは、$x_{A}$について整理すると \[1=(2.5a+b)-(a+b)x_{A}\] となるので、両辺の係数を比較することにより連立方程式 \[2.5a+b=1,   a+b=0\] が得られる.これを解くことでも求められる. この求め方を{\bf 係数比較法}という. 分母が1次式の積に因数分解できるときは、 数値代入法による方が簡単である.