例題集

固体の乾燥速度と乾燥時間

適用レベル   難易度:
湿り固体を加熱して乾燥するとき, 乾燥速度$R$ [kg$/($m${}^2\cdot $s$)$]は含水量$W$ [--]の大きい間は一定値$R_c$となる. この期間を{\bf 恒率乾燥期間}と呼ぶ. しかし, 限界含水率$W_c$と呼ばれる含水率以下では乾燥速度は徐々に小さくなり, 平衡含水率$W_e$に達して乾燥が終わる. この期間を{\bf 減率乾燥期間}と呼ぶ. いずれの期間においても, 乾燥速度$R$は含水率$W$を時間$t$ [s]で微分した次の式で定義される. $$R=-\frac{M}{A}\frac{dW}{dt}$$ ここで$M$ [kg]は完全に乾燥させた固体の質量, $A$ [m${}^2$]は乾燥面積である. \begin{enumerate} \item[(1)] 恒率乾燥期間の乾燥速度を$R = R_c$として, 初期含水率$W_0$から限界含水率$W_c$まで乾燥するのに要する時間$t_c$を与える式を求めよ. \item[(2)] 減率乾燥期間の乾燥速度$R$が $$R=R_c\,\frac{W-W_e}{W_c-W_e}$$ で与えらえるとき, 限界含水率$W_c$から最終含水率$W_f$まで乾燥するのに要する時間$t_f$を与える式を求めよ.
{\bf 【方針】} \item (1) は $R=R_c$ (一定) として, $R=-\displaystyle\frac{M}{A}\frac{dW}{dt}$ に代入し, 定積分により$t_c$ を求める式を作る. \item (2) は $R=R_c\,\displaystyle\frac{W-W_e}{W_c-W_e}$ を, $R=-\displaystyle\frac{M}{A}\frac{dW}{dt}$ に代入し, 定積分により$t_f$ を求める式を作る. $t=0$ のとき $W=W_c$, $t=t_f$ のとき, $W=W_f$ とする. \item $M$, $A$ は定数と考える. {\bf 【解答】} (1) 恒率乾燥期間の乾燥速度$R_c$は一定値なので, $$-\frac{M}{A}\frac{dW}{dt}=R_c$$ 変数を分離して, $$dt=-\frac{M}{A}\frac{dW}{R_c}$$ 与えられた区間で定積分すると, $$\int_0^{t_c}\,dt=-\frac{M}{A}\int_{W_0}^{W_c}\frac{dW}{R_c}$$ $$\Bigl[t\Bigr]_0^{t_c}=-\frac{M}{R_cA}\Bigl[W\Bigr]_{W_0}^{W_c}$$ $$t_c=-\frac{M(W_c-W_0)}{R_cA}=\frac{M(W_0-W_c)}{R_cA}$$ したがって, $t_c=\displaystyle\frac{M(W_0-W_c)}{R_cA}$ である. (2) $R=-\displaystyle\frac{M}{A}\frac{dW}{dt}$ より, $$dt=-\frac{M}{A}\frac{dW}{R}$$ 減率乾燥期間の乾燥速度を代入すると, $$dt=-\frac{M}{A}\frac{dW}{R_c\,\frac{W-W_e}{W_c-W_e}}$$ 与えられた区間で定積分すると, $$\int_0^{t_f}\,dt=-\frac{M}{A}\int_{W_c}^{W_f}\frac{dW}{R_c\,\frac{W-W_e}{W_c-W_e}}$$ となるから, \begin{align*} t_f&=-\frac{M(W-W_e)}{R_cA}\Bigl[\ln|W-W_e|\Bigr]_{W_c}^{W_f}\\ &=-\frac{M(W-W_e)}{R_cA}(\ln|W_f-W_e|-\ln|W_c-W_e|)\\ &=\frac{M(W-W_e)}{R_cA}\ln\frac{W_c-W_e}{W_f-W_e} \end{align*} したがって, $t_f=\displaystyle\frac{M(W-W_e)}{R_cA}\ln\frac{W_c-W_e}{W_f-W_e}$ である. 【注意】 \item $\displaystyle\int\,dx=x+C$, $\displaystyle\int\displaystyle\frac1{x+a}\,dx=\ln |x+a|+C$ (不定積分) \item $F'(x)=f(x)$ のとき, $\displaystyle\int_a^b f(x)\,dx=\Bigl[F(x)\Bigr]_a^b=F(b)-F(a)$ (定積分) \item $\log_e x=\ln x$ と書く. (自然対数) \item $\ln M-\ln N=\ln\displaystyle\frac{M}{N}$ (対数の性質)